2011.02.20 インタビュー・対談

セカンドステージはここから始まる

聞き手: 「本の話」編集部

『花の鎖』 (湊かなえ 著)

セカンドステージはここから始まる

──新作『花の鎖』は三人の女性を主人公に据えたミステリーですが、いままでの湊さんの作品とは一味も二味も違った意欲作だと思います。一読して思ったのは、登場人物が本当に魅力的だということです。そのうえ、ミステリー的な仕掛けも楽しめる。本当に面白く読みました。そもそも発想の出発点はどこにあったのですか。

 出発点は、数独パズルです。二〇〇八年にミステリー作家として単行本デビューさせて頂いて、もっと構成の勉強をしたいと思っていました。物語を構築していく過程を勉強するのに、パズルはどうだろうと始めたら、面白くて面白くて。小説を書くより、パズルの方が楽しいような状態でした。そうするうちに、別册文藝春秋編集部の方からお声をかけて頂き、三つの場面があるお話を書きたいと申し上げたんです。

──三人というより、三つの場面だったんですね。

 そうです。三つの舞台ですね。三つのステージの中にそれぞれ主人公がいて、そこでパズル的なものを構成したいという思いと、そういうパズルだけではなく、主人公の成長といいますか、「ここでこれがあったから、このことが起こる」という、人と人の繋がりをきちんと書きたいと思いました。いままでは、人間同士の負の連鎖を多く書いてきましたが、今度は、人と人の繋がりがよい方向に転じていく話を書きたいという思いも強かったですね。

──今回は、殺人事件もなければ、すっごくイヤな奴も出てこない。いままでのテイストと随分違うと思いましたが、それは意識的だったんですね。

 自分の中では「負」を描くことは、一区切りついたと思っているんです。書き切ったというよりも、そろそろ別の自分を試してみたかった。

──いわば、湊さんの中には、「黒湊さん」と「白湊さん」がいて、今回は「白湊さん」のご登場。

 そうです、白湊です(笑)。ただ、今までも意図的に負の方向へ進めて行ったわけではなくて、行き着く先を徹底的に追求した末に生まれたものだと思っています。『花の鎖』の場合も、無理にいい方向へ転じたわけではなくて、流れに沿って、行ける所まで行った末に生まれた小説です。

──書き始める前に登場人物のバックグラウンドを細かくお決めになると伺ったことがあります。今回も、かなり詳しく?

 そうですね。それぞれの気持ちの流れとか、こういう環境に置いたらどう考えるかなどはかなり練りました。ですので、読者の方が三人の女性の中に、何か自分にひっかかるところを感じてもらえたら嬉しいですね。誰に一番共感したかとか、自分を誰に投影したとか。男性読者ならば、どの女性がタイプだとか。

──梨花、紗月、美雪の三人のうち、誰が一番人気があるのか気になりますね。この小説で重要な役割を果たすのが、花束を毎年贈る、「K」という謎の人物です。この「K」は誰なのかという謎が物語を引っ張っていきますが、その謎解きだけで終わらないのが『花の鎖』の魅力だと思います。

 ただ、パズル的なものだけを狙ったのではなく、人間について書きたいという思いが先にあったので、早い段階で「謎」に気づかれたとしても、それはそれで楽しんでもらえるようにしたつもりです。

花の鎖
湊 かなえ・著

定価:1400円(税込) 発売日:2011年03月09日

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