2014.01.30 日めくり立ち読み『感受体のおどり』

第34番

文: 黒田 夏子 (作家)

登場人物紹介

 店びらきか,おもての街ではふうせんをくばっていた.通りすがりに赤いのを一つ受けとってうらの街まで帰ってくると借りべやに近いあたりに幼児が一人であそんでいたので,手を放すと逃げると忠告して糸をからめるようににぎらせた.

 休日で,めずらしくごご早いへやをかたづけたりしていると,われてしまっているので子どもが気おちしている,だれだろうか,われたふうせんなどくれたのはと,親がとてもおこってさけびたてるのが聞こえた.突いたらこわれるとは忠告しなかったと,おもわず首をすくめた.むろん,はじめからわれたのをわたされたのだったら気おちするもしないもないので,おかしな言いがかりというものだが,みょうになっとくのいく怒りにもおもえた.おもての街でおびただしくくばられていた色とりどりのふうせんは,やがてみな逃げたりわれたりしぼんだりする.この暗い路地に,もちこんではならないものだったのかもしれなかった.

感受体のおどり
黒田夏子・著

定価:1,850円+税 発売日:2013年12月14日

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