2015.11.04 インタビュー・対談

ビジネスマンは、必要とされる人間であれ!

聞き手: 「オール讀物」編集部

橋本和宏(日本スターウッド・ホテル株式会社 代表取締役)

ビジネスマンは、必要とされる人間であれ!

 企業の社長や組織のリーダーは、どんな本に出会い、影響を受けてきたのか。厳しい競争を勝ち抜いてきたビジネスマンの読書遍歴をたどり、その思考法に迫る「リーダーの愛読書」。第3回は、世界百カ国でホテルを運営する、日本スターウッド・ホテル株式会社の橋本和宏代表取締役に話を聞いた。

『翔ぶが如く 一』 (司馬遼太郎 著)

 これまでのビジネスマン人生で、中国、ポルトガル、アメリカなどで合計十年間、海外勤務を経験しました。海外にいると、どうしても、日本語の本が読みたくなります。大学時代に、今でいうワーキングホリデーで、ブラジルで一年間過ごし、日本の製鉄会社の現地工場で働いていたんですが、空いた時間には、駐在員が残していった文庫本を読んでいました。人気だったのは、五木寛之さんや司馬遼太郎さん。なかでも、司馬さんの『翔ぶが如く』が印象に残っています。当時のエッセイやテレビでの発言などは世論に影響を与えていましたし、まさにインテリの象徴的な存在でしたね。

 若い頃から振り返ると、三十年以上前、私が浪人生のときに読んだ村上龍さんの『限りなく透明に近いブルー』は不思議な作品でした。当時、この芥川賞受賞作が私にはまったく理解できなかった(笑)。エンタメ作品では必須の起承転結といったストーリー性がないんですから。米軍基地の街・福生を舞台に、ドラッグや性的な行為、退廃的な日常が描かれているんですが、不純なエログロではない。あまりに爽やかなんです。これは何だ? と思いながら、分からないことの面白さや、爽快感を味わいたくて、何度か手に取りました。

 私の娘は、あまり本を読まないのですが、又吉直樹さんの『火花』を読んで、すごく面白かったらしいんです。芥川賞と言えば純文学。今の純文学は、分かりやすくなってきたんだな、と驚きましたね。

 本を選ぶときの私の基準は、“作家買い”です。その一番手は浅田次郎さん。一九九〇年ごろに、週刊テーミス(現在休刊)の連載(デビュー作『とられてたまるか!』)を読んで、この作家は絶対に売れると、高校時代の友人であるノンフィクションライターの森功と話していました。ドンドン続きが読みたくなる文章で、ウィットに富んだ語り口が素晴らしい。

『歩兵の本領』の舞台は、一九七〇年ごろの東京で、志願して自衛官になった若者たちの涙と笑いの青春グラフィティです。あのころは、不良たちが「更生するために自衛隊に行け」と言われていた時代。「重機の免許が取れるから、自衛隊に入らないか」といった具合に誘われる、と小説にありますが、実際にぼくも上野で二度くらい勧誘された。強面だったからでしょうか(笑)。

 初めての作家の小説を読むときは、文章に慣れるまで、我慢をして読むのですが、浅田さんはそんな必要もないくらい、圧倒的に文章が上手かった。一方で『蒼穹の昴』『日輪の遺産』といった重厚な作品を書かれている。そのギャップも好きですね。

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翔ぶが如く 一
司馬遼太郎・著

定価:本体630円+税 発売日:2002年02月08日

詳しい内容はこちら

オール讀物 2015年11月号

定価:980円(税込) 発売日:2015年10月22日

詳しい内容はこちら


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