2014.05.08 書評

数学を学ぶ2つの秘訣

文: 柳谷 晃 (数学者)

『数学はなぜ生まれたのか?』 (柳谷晃 著)

 数学の教科書に何が扱われていたか、覚えている人は少ないでしょう。あまりいい思い出もないでしょうから、覚えていたくないかもしれません。あまり好かれない数学も、実はいたる所で使われています。

 そんなことはないよ、とおっしゃる人もいるでしょうね。毎日、数学など使わないで生きている。そう考えても無理はありません。目の前に現れていませんから。数学を毎日使っているということを意識できる人は、良い目と耳を持っている人です。見えないものを見て、聞こえないことを聞く力があるからです。

 毎日、便利に使える電子レンジも、電磁波を発生するための理論を記述するのは数学です。天気予報に使う大気の状態を記述したり、統計処理をするのも数学の力です。身近なものに使われていますが、使われているところが、かなり深く難しいので、だれも見えないし、聞こえません。電子レンジはチンという音だけです。電磁波は聞こえません。

 現代は数学が身近なところにない世界になりました。それだけ、難しい使い方をしているということです。使う数学自体も難しくなりました。ですから、今の世界だけを見ていると数学がなぜ必要なのかを実感できません。

 では、数学がなぜ必要なのかをわかりたければどうすればよいでしょうか。それは、古代の人の苦労を考えるのが最も良い方法です。作物を作るためには、絶対に必要なのがピタゴラスの定理です。そんなことはないよ。種を蒔く時期は作物によって決まっている。そう考えなしの現代人は答えるでしょうね。それは今に生きていて、いつでもカレンダーを見ることができるからです。古代社会で農耕が中心になると、大切なのは種を蒔く時期です。数もそれほど多くまで数えられないのに、今日は何月の何日かなどと、わかる人はいません。

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数学はなぜ生まれたのか?
柳谷晃・著

定価:730円+税 発売日:2014年04月21日

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