2013.01.08 書評

歴史にも驚くべきスクープがある

『幕末会津の女たち、男たち 山本八重よ銃をとれ』 (中村彰彦 著)

 歴史上の出来事が、新たな証拠によってまったく違う顔を見せることがある。善人が悪人になり、脇役が主役に躍り出る――。歴史が書き換えられる瞬間だ。その興奮を味わえるのが中村彰彦さんの『幕末会津の女たち、男たち 山本八重よ銃をとれ』である。

 本書は来年NHK大河ドラマ「八重の桜」で話題の山本八重を始め、幕末明治を生きた八人の会津人を取り上げた歴史エッセイ。「会津史を深く学ばなければ」との思いから会津通いを始めて26年、いまやこの分野の小説で第一人者となった中村さんは、一昨年『会津戊辰戦争 戸ノ口原の戦い 日向内記と白虎隊の真相』という画期的な著作に出会った。

「歴史の研究は実に地道で、劇的な進歩はなかなかしません。しかし、白虎隊について定説を覆す驚くべき発見がこの本に書かれていた。これまで白虎隊の隊長日向内記は、政府軍を前に敵前逃亡した“裏切り者”と考えられていましたが、それはまったくの間違い。それどころか会津藩滅亡後、斗南藩(青森県)に追いやられた会津人に食糧を調達するため地下工作をした功労者だったことが明らかにされていたのです。これをさらに多くの人に知ってもらいたくエッセイにしたのが、本書執筆のきっかけとなりました」

 会津藩は、戊辰戦争の最終局面で1か月もの籠城戦を繰り広げた。武士の奮闘もさることながら、女性たちの活躍には目を見張るものがある。

「戦国時代の信州高遠に諏訪はなという女性がいましたが、彼女は高遠合戦の際に敵兵二人を切り殺した女武者でした。このような逸話が連綿と語りつがれ会津の女たちを鼓舞したのかもしれません。今注目の山本八重は、臼のような腰つきで四斗俵を自由に上げ下げしたといいますから、今なら重量挙げの選手になれるほどの怪力。しかも女ながら射撃術を修めていて、籠城戦でも銃で新政府軍を撃退したのです。
 一方で八重のように勇ましい話ばかりではありません。例えば神保雪子という女性がいます。彼女は夫、義父、両親、姉ともに自決し、自らも自刃するという悲劇に見舞われました。しかも彼女は自刃する前、敵兵に捕らわれ、嬲りものにされたようなのです。しかしこの事実は長らく伏せられ、会津では雪子は敵兵と戦って死んだことになっていた。あまりにも悲惨な死だから、せめて戦死であってほしいという会津の人々の願いが聞こえるようです。このような歴史の切なさも誰かが伝えて行かなければという思いで書きました。本書で巷間言われるのとはまた別の会津の姿を知っていただければこれに勝る喜びはありません」

幕末会津の女たち、男たち

中村彰彦・著

定価:1470円(税込) 発売日:2012年11月3日

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