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奮闘する編集者が見つけたふたつのP

奮闘する編集者が見つけたふたつのP

文:大矢 博子 (書評家)

『プリティが多すぎる』 (大崎梢 著)

出典 : #文春文庫
ジャンル : #エンタメ・ミステリ

 出版社、そして編集という仕事を明るく温かく活写する大崎梢の優しい文体や、繰り広げられるエピソードのひとつひとつについても紹介したかったが枚数が尽きた。作中である人物がピピンを「明るい場所に駆け出すような雰囲気」と評する場面があるが、それはまさに大崎梢の作風だ。そこは本文で味わっていただくとして、周辺情報を少し。

 本書の舞台となっている千石社は、大崎梢の他の著作にも主要舞台として登場する。本書で南吉くんが相談を持ちかける文芸担当の先輩・工藤は、『クローバー・レイン』(ポプラ文庫)の主役だ。私は『クローバー・レイン』を読んだ際、「ごん、おまえだったのか」と膝を打った。ごんじゃないけど。この工藤と南吉のコラボ短編「花とリボン」はwebマガジン「ポプラビーチ」で読める。

 一方、電子雑誌「つんどく!」(文藝春秋)で連載中の「スクープのたまご」は、南吉くんが一年前までいた「週刊千石」の記者になった若き女性社員・日向子の物語である。日向子は、暴露やスキャンダルを扱う扇情的な週刊誌というものにいい印象を持っていない。南吉くんとは逆に、自信の欠片もない。

 張り切っていた南吉くんをピピンに出し、日向子を「週刊千石」に入れるとは、千石社、なかなかに鬼である。千石社サーガはこれからも広がりを見せるのだろうか? 楽しみでならない。私はピピモに翻弄される南吉くんのその後を、ぜひ読んでみたいのだけれど。

文春文庫
プリティが多すぎる
大崎梢

定価:748円(税込)発売日:2014年10月10日

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