2016.05.01 インタビュー・対談

襲名の前に、やりたかったこと――神林東吾役・中村橋之助

聞き手: 「オール讀物」編集部

「御宿かわせみ」シリーズ (平岩弓枝 著)

襲名の前に、やりたかったこと――神林東吾役・中村橋之助

――好評だったNHKの「御宿かわせみ」(2003年~2005年放送)の終了から、11年。いよいよ待望の舞台化となりました。

橋之助 もうそんな経ったんですか、というのが、正直な感想です。放送が終ってからも再放送されたこともあると思いますが、全国巡業などで電車やバスで移動する機会があると、乗りあわせた方から、「かわせみ、またやらないんですか?」と声を掛けられることが、とても多くて……(笑)。ですから、その声に、今回ようやく応えられた気がします。

 ドラマ放映直後にはずいぶん舞台化のお話も、いただいたんです。(中村)勘三郎兄貴に、兄貴(中村福助)がるいで、私が東吾で、歌舞伎でやったらいいじゃないかって、言われたこともありましたね。でも、舞台の方は、高島さんが「まだ舞台は自信がないんですよ」とおっしゃったのでなかなか実現しなかったんですよ。

――橋之助さんが最初に「かわせみ」で東吾を演じた時は、どんな気持ちでいらっしゃいましたか。

橋之助 最初にお話をいただいたときは、「『御宿かわせみ』をやらしてもらえるのですか」と驚きましたね。これだけ、今まで多くの人が演じてこられたお話も、珍しいんじゃないですか? 亡くなった女優の池内淳子さんが、最後のドラマ出演のときに、撮影が深夜までかかったんですが、その別れ際に車から声を掛けられて、「あなたの東吾と高島さんのるい、私は好きよ。私も若ければ、るいがやりたかったわ」って言われたこともありましたね。ですから、ドラマを始めるときには、これまでの「東吾とるい」を、意識しました。小野寺昭さんと真野響子さんの「かわせみ」も何度も見ました。それで、我々はどんな「東吾とるい」にしようか、高島さんとはずいぶんと相談しました。そこで、高島さんと私は、ほぼ同級生なんで、「同級生の恋人」のような「東吾とるい」にしようと……。ちょうど「御宿かわせみ」のドラマが放映されていた頃というのは、時代劇が衰退しはじめたと言われた頃で、なんとか我々ががんばらなくてはと、高島さんも私も2人とも必死にやりましたね。

――高島さんとのコンビは、今回の舞台の制作発表でもすでに息もぴったりでした。橋之助さんからご覧になった久しぶりの「おるいさん」はいかがでしたか。

橋之助 るいは、原作でも「女長兵衛」なんてよばれてますが、高島さんにも、そういう芯の強いところがあります。2人に重なるところがあるから、役がしっくりくるんでしょうね。あと、とにかくさっぱりしていて、女形のような方なので、とてもやりやすい(笑)。「かわせみ」は、実は登場人物が少ないですから、るいさんだけでなくて、他のキャストとも、おのずとチームワークもよくなるんですよ。だからドラマのときも、とても楽しい現場でした。今回もたぶんそうなるのではないでしょうか。

――久しぶりに神林東吾を演じてみて、改めて、ご自身と似ていると思われることはありますか? また、男から見た東吾の魅力はどこにあると思われますか?

橋之助 似ているところは、やはり、次男坊というところですね。東吾には、能天気と思われるかもしれませんが、自由と寂しさがある。東吾の魅力は“お人よし”ですよね。さして器量があるわけでないけれど、けっして格好つけないところは、男から見ても「いいな」と思います。あと、私は、「かわせみ」の中で、とても印象的なエピソードがあるんです。それは、東吾がまだ幼い頃、お母さんが亡くなるときに、兄の通之進と東吾が2人で仲良くするようにと、2人の手をあわせて握るんです。それで東吾がたまらずに泣き出すと、通之進が東吾を次の間へ連れて行って、東吾の手を、さきほどまで母がしていたようにずっと握っててやると、しばらくして東吾が泣き止むんです。その話がとても好きでしてね……。東吾の魅力には、そういう父代わりの兄の通之進の影響があるんじゃないでしょうか。

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