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「私たちは会社を捨てる」<br /> ハーバード卒から新しい主婦へ

「私たちは会社を捨てる」
ハーバード卒から新しい主婦へ

文:ノンフィクション編集部

『ハウスワイフ2.0』(エミリー・マッチャー 著 森嶋マリ 訳)


ジャンル : #ノンフィクション

 オーガニック志向が強いのも特徴だ。 すべての食事を有機食材で手作りするのみならず、裏庭で鶏を飼ったりもする。また自然派育児に情熱を傾け、ホームスクーリングにも積極的だ。

 ハウスワイフ2.0は、SNSやワークシェアリングとも親和性を持つ。そして近い未来、IT技術とグローバル化が極まり「ワークシフト」が起これば、ひとつの会社の中でしか通用しない今までの男性型ゼネラリストよりも、職人的な技術を持つハウスワイフ2.0のほうが有利になるという。

日本でも同じ現象が起きている

 翻って日本においてはどうだろうか。若い女性たちのアンチ・ロールモデルは、均等法世代以降に登場した、総合職としてバリバリ働く“バリキャリ女性”なのかも知れない。激務と家庭の両立で体を壊したり、“負け犬”となる姿を見て、後輩女性たちが専業主婦になりたいと願うのも無理はない。

 実際のところ、育児とキャリアを両立できる“スーパーマザー社員”はごく少数。夫も両親も頼れず、泣く泣く辞めるケースは後を絶たない。復帰できたものの第一線から外されることも多く、真面目なママ社員ほどキャリアの行き詰まり感から辞めてしまう。そもそも日本では、高学歴女性は専業主婦になる確率が高い。彼女達の夫が高学歴かつ高収入だからだ。

 一方、メディアでは日本版ハウスワイフ2.0的な生き方が羨望を集めている。大部数を誇る最先端セレブ主婦雑誌では“ミセス・オーガニックさん”“ママCEO”のネーミングのもと、オーガニッククッキーをナチュラル系コンビニで販売することに成功した若いママ起業家などが登場している。

 彼女たちの人間らしい生き方は、会社と心中したくないキャリア女性、会社での将来が見えないママ社員、社畜になりたくない20代男性の共感をも誘いはじめているかのようだ。

 日米同時多発的に起きているこのハウスワイフ2.0現象。マッチャーいわく、「完全なハウスワイフ2.0」になるには、更に必要な条件があるという。

 すなわち、身近な男性である夫を家事育児に巻き込みボトムアップで社会を変えること、「夫というインフラ(経済的基盤)つきだから可能」との批判を乗り越えるために経済的独立を心がけること、高価なオーガニック食品が買えるそこそこ恵まれた層なのだから、「社会に無関心な、優雅な引きこもり」に終わらないようにすること、などだ。

 いずれにせよ、旧来の男性や会社中心型の働き方、生き方からの大胆なシフトが起きているのは間違いない。

ハウスワイフ2.0
エミリー・マッチャー・著 森嶋マリ・訳

定価:1,600円+税 発売日:2014年02月24日

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