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「本の話」編集部

中高生は漱石や太宰を読んでいる?

 本を読むきっかけのひとつが読書感想文。夏休みの宿題や読書の秋にあわせて学校で書かされた覚えのある方が多いのでは? こんな質問をいただいています。

高校生の娘は本が好きですが、中学からの読書傾向を見ても、私がその年代に読んだような夏目漱石や太宰治、あるいは志賀直哉や川端康成といった作品を買っているようには見えません。こうした古典的名作は、今も中高生に読まれているのでしょうか?(東京都 40代 男性)

内田剛(三省堂書店神田神保町本店)

 中高生自体が部活や受験で忙しく読書時間がほとんどない、と聞きます。夏目漱石『こころ』など古典再読の潮流はありますが、主な読者層は中高年の再読需要のようです。夏の読書感想文の宿題で、古典作品を探す学生はいますが、以前のような熱は薄まっている印象。教科書に載っている、受験問題で採用された、等の作品は売れますので、店頭でももっと若い世代に向けた古典作品の訴求を進めたいです。

 

高橋佐和子(山下書店南行徳店)

 当店の傾向を見ていると、あまり購入されている感覚はありません。私は、お恥ずかしながら、学校で読まされたり勉強させられたような本が好きではありませんでした。読んでいると、何だか心が暗くなり息苦しくなるからです。母に何度も、「読んでみなさいよ」と勧められても、数ページで挫折していました。しかし、不思議なことに、30代の今になって、そういった本に興味を持つようになってきました。本は「どの時期に読んでも良い」と思っています。学生さんと話していても「読んでも良く分からなくて」とおっしゃいます。多分、私のように、学校で教わり、知識として頭の中にあるだけで、ふとした瞬間に「読んでみようかな」と思うようになるのではないかなと感じています。もちろん若い人でも購入される方もいます。年代関係なく、自主的に読みたいと思える環境作りが大切なのかもしれないと感じています。当店では古典名作が日々売れる訳ではないですが、少しでも在庫を持っておくようにしています。いつでも、興味を持ってもらえるように。

 

野坂美帆(紀伊國屋書店富山店)

 読まれていると思います。ですが、20年前、30年前と同じようにかと言われると、比較できるデータを知らないのでお答えしにくいです。弊店では学生服のお客様にも、挙げられたような作家さんの名作をよくお求めいただいていると思います。夏の大手出版社の文庫フェアでも、必ず夏目漱石や太宰治はリストに入っています。売れないタイトルを入れるとは思えませんので、出版社内でも売り上げ上位品目なのだろうと思います。ただそれが年代別にどうかと言われると、わかりかねます。私は34歳ですが、自分が中高生であったときの古典的名作との距離感と、今の中高生が感じる距離感は違うのだろうか、ということを考えることがあります。例えば大江健三郎の作品は、中高生にとっては古典的名作に近いのか、それとも同時代性を感じるものなのか、など、作品が生まれた時代と読む人との時代の差異、作品との距離感は時代の差異と関係するのか。少なくとも書店として、これからたくさんの本と出会う可能性のある若いお客様に、多様な商品を提供したいという気持ちはあります。古典的名作もきちんと品揃えし、手に取っていただきやすい環境を整えたいですね。

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