2008.04.20 インタビュー・対談

「場所」の魔力と「日常」の重さ

聞き手: 「本の話」編集部

『ホーラ 死都』 (篠田節子 著)

――今回の作品のタイトルの「ホーラ」とは、耳慣れない言葉ですね。

 ギリシャ語の一般名詞で、「その地域の中心」といった意味です。エーゲ海のとある島に行ったとき、島のてっぺんに町があって、現地の方に町の名前を聞いたら「ホーラだ」って言われたんです。でも、それまでにも何箇所かで「ホーラ」という名称を聞いていたので不思議に思ったら、とくに個別に町の名前があるわけではなかったようです。

――そのタイトルどおり、物語の舞台はギリシャ、エーゲ海に浮かぶ小さな島の廃墟となった町です。そもそも、なぜギリシャを舞台に書かれたのでしょう。

 一九九八年ごろに、キプロスに行ったんです。そのときはキプロスを取材して作品を書いたんですが、南キプロスは人々の帰属意識も文化もほとんどギリシャ。それで自然にギリシャにも足を延ばして、その風土や人々にとても魅力を感じました。いままでに、もう四、五回は行ってますね。あの辺りは古代からいくつも勢力が争ってきたところで、現代に入っても戦争や内戦が繰り返されていて、その背後にあって避けて通れないのが、宗教なんです。だから実際に現地に行くと、非常に宗教的な匂いがしますね。教会も修道院も、とにかく至るところにある。べつに私だって普通に観光をしたいわけで(笑)、宗教的なものを目的に旅しているつもりはないんですが、否応なく通らざるを得なくて。そうして見ていると、いろいろ面白いものがあったんですよ。難しい神学はさておき、庶民の生活に祭礼や年中行事として根を張っているし、みんな神秘的なものとか、奇蹟が好きだし。

 それに加えて、エーゲ海の島もキプロスも土地としてはあれだけ小さいところなのに、様々な民族・人種・文化が入り混じっている。文明の十字路と簡単に言ってしまうけれど、シルクロードみたいに商人がそれぞれの文化を持ってやってきて、文化が花開くという平和的なものでは決してなく、すさまじいばかりの支配と占領の歴史があった。その土地柄に魅力を感じたんです。

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ホーラ 死都
篠田節子・著

定価:本体562円+税 発売日:2011年01月07日

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