ずうっと昔から、物語の最高峰はコメディではないかと考え続けておりまして。
泣かせたり、感動させたり、喜ばせたり、驚かせたりと、小説はひとの心をぐいぐい動かしますが、晴れ晴れと誰かを笑わせるコメディは、とても徳が高いような気がするのです。
よく笑うひとは、若々しくて長命だという研究がありましたっけ。
そんなわけで、ふだんサスペンスやテロ小説をよく書く私も、コメディを書くことを、ひとつの目標にしておりました。
材料は何がいいでしょう。現代を舞台にしたコメディだけど、ちょっとレトロな味わいのある素材がいいな。
「花火、どうかな」
「花火、いいね、いいね」
「花火師さん、取材してみる?」
編集者さんにそそのかされ(?)、かるーいノリで始めた取材に、一年以上を費やしました。二〇一五年の夏は、花火ざんまいです。長岡まつり、大曲全国花火競技大会、土浦全国花火競技大会をはじめ、取材させていただいた花火師さんが打ち上げる花火を、ほとんど追っかけのように駆けめぐり。
美しい花火にこめられた花火師さんたちの情熱をまぶしく見上げながら、わずか数秒間、夜空に花開いて消えていくはかない瞬間芸術を、どうやって言葉に写し取ろうかと真剣に考えている自分がおりました。
貴重な一瞬を永遠に写し取る。
そんなワザ、私にできるかしらん。
長岡まつりを見るために訪れた新潟で、山古志にもたどりつきました。のどかな田園の風景に、物語はここから始まるのに違いないと確信しました。
またまた頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。
「別冊文藝春秋 電子版6号」より連載開始