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「寄せては返す波の音」と評されたコラムの達人・山本夏彦

「寄せては返す波の音」と評されたコラムの達人・山本夏彦

文・写真:「文藝春秋」写真資料部

「まじめということはよいことだと思われているが実は悪いことなのだ」「何でも『話しあい』にかぎる、この世に話しあいできないことはないというが、むろんウソである」「天(あめ)の下に新しきことなしと古人は言った。この世の中にニュースはないと私は言う」……。

 コラムの達人・山本夏彦は、同じことを何度も繰り返し書いて、「寄せては返す波の音」と評された。そして、多くの読者から、広く共感を集めた。

 大正四年(一九一五年)東京市下谷根岸で生まれる。父は詩人の山本露葉。昭和三年(一九二八年)、父が死去。亡父の友人だった武林無想庵に連れられ、渡仏。昭和八年に帰国する。昭和十四年、レオポール・ショヴォの童話「年を歴た鰐の話」を翻訳、「中央公論」増刊号に掲載される。

 戦後・昭和二十五年、建築関係の出版社「工作社」を設立、インテリア専門誌「木工界」を創刊、同誌にコラム「日常茶飯事」を連載し、昭和三十七年単行本化される。このコラム集によって注目を集めた。昭和三十六年、「木工界」を「室内」と誌名を変更し、雑誌は結局、五十年にわたって刊行された。

 昭和五十四年、「週刊新潮」に「夏彦の写真コラム」の連載開始、「諸君!」で「笑わぬでもなし」を亡くなる直前まで三百五十回以上書き続けた。

〈正義という名の偽善、犬にも劣る人間の醜さ、進歩・平等のうさん臭さ――山本夏彦氏の軽妙かつ辛辣な筆にかかって、およそ無事なものはない。しかも見事に的を射ているから、読者は思わずポンと膝を叩くか、背筋がゾーッと寒くなる。それでいて、行間に時折漂う人肌のぬくもりがファンをとらえて放さない〉(「文藝春秋」昭和五十九年十二月号「日本の顔」より)

 写真はこのときに撮影。平成十四年(二〇〇二年)没。

電子書籍
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文藝春秋編

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