練緒(ねりお)の初ぶたいのふりそでには,五しきのひもかざりがゆれていた.ちらちらときんぎんの髪かざりもゆれていた.
高い黒ぬりのげたをはかす私の肩へ,つかまれと言えばすなおにつかまってきた,手ゆびの,手くびの,あるかないかに,そのとき私にかかってきた重みは,ただひとかさねのきぬの重みでしかなかった.
あこがれにほそり,いまあるありようから飛びたとうとする渇きに浮いて,たびさきの,足くびの,あるかないかに,なに者にでもなれた,なに者でもなかった練緒(ねりお),練緒(ねりお)でなかった練緒(ねりお)があった.
プレゼント
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『もう明日が待っている』鈴木おさむ・著
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