レビュー

科学技術系大学の最高峰MITが公開する
「感動する物理学」の授業

『これが物理学だ!マサチューセッツ工科大学「感動」講義』(ウォルター・ルーウィン著 東江一紀訳)

文: 東江 一紀 (翻訳者)

 ウォルター・ルーウィン、76歳(2012年現在)。マサチューセッツ工科大学(MIT)物理学科教授。おそらく今、世界でいちばん人気のある大学教授だろう。教壇のスーパーヒーローと呼ぶ人もいる。《ニューヨーク・タイムズ》から進呈された称号はWebスター。インターネット公開授業の嚆矢となったMITオープンコースウエアで、一躍全世界の注目を集めたからだ。

 訳者もじつは、本書の翻訳を引き受ける直前に、ウェブで偶然、この人の授業のようすを目にして、「おおっ!」と引き込まれてしまった。それは、本書第3講にある「人間振り子」の実演だったのだけれど、要するに、錘(おもり)の重量にかかわらず振り子の周期は一定であるというごく単純なニュートン力学の基本原理を、教養課程の(物理学を専攻しない)学生たちにわからせるただそれだけのために、この初老の教授は身を張って、巨大な振り子の一部と化し、教壇の上空数10センチ~数メートルの宙を揺れてみせているのだった。

 学生たちのカウントアップの声の中、大きな弧を描いて10往復する。デジタル・ストップウォッチに表示された時間は45.61秒。錘だけで揺らしたときの所要時間45.70秒との差は0.09秒で、みごと計測誤差の範囲内だ。ルーウィン教授は息をはずませながら(結構な重労働なのだ)、「これが物理学だ!」と胸を張る。授業というよりパフォーマンス・アート。運動の法則を理屈ではなく体験として、学生たちの五感に刻みつけてみせた。


ルーウィン教授のMIT講義デモテープ

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これが物理学だ!マサチューセッツ工科大学「感動」講義

ウォルター・ルーウィン・著  東江一紀・訳

定価:1890円(税込) 発売日:2012年10月13日

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