2012.01.13 インタビュー・対談

国民一人一人を考えておられる真剣なお姿を知ってもらえたら

聞き手: 「本の話」編集部

『天皇家の執事 侍従長の十年半』 (渡邉允 著)

国民一人一人を考えておられる真剣なお姿を知ってもらえたら

――侍従長として両陛下にお仕えした日々を綴った回想録『天皇家の執事 侍従長の十年半』が、このたび文庫化されました。御所における両陛下のご日常から、災害のお見舞い、宮中祭祀、外国ご訪問でのお姿に至るまで、貴重なエピソードが紹介されています。

渡邉 両陛下のお傍にいると、日常のふとした瞬間に「陛下はこういうことを考えておられるのか」と、気付かされることがあるんですね。たとえば、宮崎の西都原古墳群を訪ねられた時のこと。40年以上前に農民の足下が陥没したことを切っ掛けに発見された古墳についてご説明を受けられると、陛下は真っ先に「その農家の人にけがはありませんでしたか」とお聞きになったのです。普通すぐには、そこまで思い至りませんよね。このような瞬間に陛下の本当のお人柄が表れているのだと思います。

 もちろん、陛下のお考えやお気持ちはお言葉などを通じて国民に伝えられています。ただ、「国民の幸せを願う」「国と国民のために尽す」ために具体的に何を実践されているかまでは、なかなか伝わりません。国民一人一人のことを考えておられる真剣なお姿を、多くの方に知ってもらえたらという思いで、具体的な描写を積み重ねながら書きました。

――陛下を常に支えていらっしゃる皇后さまのお姿も印象的です。

渡邉 皇后さまがなさってこられたことには、私などには書き尽くせないものがあります。これまで様々な辛い経験もされましたが、それらをくぐり抜けてこられて、いまでは“国母”と呼ばれることも多い。その奥深く、かつ繊細なお人柄の片鱗だけでも書けただろうかという思いです。

 陛下は節目節目の会見で皇后さまの存在について触れられていますが、御成婚50年となる平成21年の会見では、感謝の言葉を述べながら声を詰まらせておられました。日々のご生活を拝見してきた者として、本当のお気持ちをおっしゃったのだなと感じたものです。

――陛下が皇居内で時速25キロの制限速度を厳密に守って運転されるお姿や、机の引き出しに片面使用済みの紙が入っていて、パソコンでの印字にお使いになっているエピソードなどは、初めて知る読者も多いでしょうね。

渡邉 陛下には、少年がそのまま大人になったような純粋さや生真面目さを感じるときがあります。そこに敬愛の念を禁じ得ません。様々なお姿が積み重なって、国民との信頼関係が生まれているのだと思います。

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天皇家の執事
渡邉 允・著

定価:730円(税込) 発売日:2011年12月06日

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