![声を殺して思春期をやりすごしたかつての少女たちへ](https://b-bunshun.ismcdn.jp/mwimgs/0/5/1500wm/img_05292ab3c5ab843828bf605ca229892b47432.jpg)
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数年前、実際に起きた事件や法律について調べていたときに、文学と司法には対立しながらも補い合うようなところがあるのではないか、と思ったことがあった。
司法では考慮されない闇や感情を受け止めるのが文学で、文学では決めつけるべきではないとされているものを定めるのが司法ではないかと。
人の心の歪みは、どんなにその原因が明確であっても、仕組みが分からなければ、理解されがたい。
実際に裁判を傍聴して、これはもう不可抗力ではないか、と思うような事件で懲役数十年もの実刑判決が出たのを目の当たりにして以来、そう思う気持ちが強くなっていた。
あらかじめ定められた罪や罰に対して、小説はなにができるのだろう。そう考えたときに、人の心を解く鍵として、心理学というモチーフが浮かび上がってきた。
その三つを組み合わせることで、声を殺して思春期をやりすごしたかつての少女たちが一人でも救われるような小説を書きたいと思った。
思春期の頃に心理学をモチーフにした小説やノンフィクションに近い本を好んで読んでいた。それらの本に出会わなかったら、自分の気持ちを理解してくれる大人がこの世界にいるなんて、想像もしなかったと思う。
『ファーストラヴ』というタイトル通り、この連載の鍵は初恋だけど、内容は恋愛小説ではなく、私にとって初めて本気で向き合う家族の物語だ。
「別冊文藝春秋 電子版8号」より連載開始
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『さらば故里よ 助太刀稼業(一)』佐伯泰英・著
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