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年金「二つの幻想」を打ち砕く

年金「二つの幻想」を打ち砕く

文:太田 啓之 (朝日新聞記者)

『いま、知らないと絶対損する 年金50問50答』 (太田啓之 著/三神万里子 解説イラスト)


ジャンル : #趣味・実用

 社会保障の専門記者として厚生労働省の記者クラブに在籍していた頃、他社の記者たちが私につけたあだ名が「熊の熊五郎」だった。体が大きくてのっそりした雰囲気であること、どことなく愛嬌のあることなどからついたあだ名だろうが、私がネタを探して厚労省内や永田町の議員会館に出没し始めると、「熊五郎が狩りに出た」と他社の記者が警戒したそうだ。実際、特ダネ記事や解説記事の量・質では、他社の追随を許さなかった、という自信がある。

  だが、私は記事を書きながらも「年金の本当の姿を、読者に十分伝え切れていない」というもどかしさやあせりを感じ続けてきた。新聞は「非常に多くの人に読んでもらえる」というメリットがある一方で、どうしてもひとつひとつの記事のスペースは限られており、年金の問題をくわしく、深く説明するには限界がある。

 自分が長年取材し、考え抜いてきた成果を本の形で世に問えば、たとえ新聞より読者の数は少なくても、より深く年金の問題を理解してもらえるのではないか。そう考えて筆を取ることにした。

 私がこの本を書いた目的は、「年金破綻」「抜本改革」という二つの幻想を打ち砕き、読者に年金の「本当の姿」を知ってもらうこと、そしてそれに基づいて読者の一人一人に年金の仕組みをうまく使いこなしてもらい、得をしてもらうことだ。

 この本には、「幻想を打ち砕くための正しい知識」「得をする知識」と共に、年金記録問題への対応や、自分の将来の年金額の試算方法など、自分自身の年金について知り、自分で守るために役立つ情報もふんだんに盛り込んだ。さらに、「公的年金とはそもそも何か」という年金・社会保障の本質論にも切り込んだ。専業主婦の「3号問題」など、女性と年金を巡る記述にも力を入れた。

 また、年金の問題を読者にストレスなくすらすらと理解してもらうために、さまざまな工夫をした。まず、ジャーナリスト、キャスター、研究者にして漫画家である三神万里子氏に大量の解説イラスト、マンガをお願いした。彼女の描くマンガやイラストはただの「挿絵」ではない。複雑な因果関係や相互関係を、ビジュアルによって一瞬で相手に伝える力を持つ強力な情報ツールであり、複雑な年金問題を扱うのに、これほど適したメディアはない。

 本文の「50問50答」も、基本的にはどの項から読んでも分かるように書き、自分に関心のある所から拾い読みできるようにした。巻頭と各章の間には「年金雑談」という対話形式のコラムも設け、年金と政治を巡る問題を中心に解説した。

 つまり、「公的年金」という複雑な問題を読者に伝えるため「本文」「対話コラム」「イラスト、マンガ」という三つのメディアを用いている。さまざまな語り口で立体的に伝えられる情報を通じて、読者は公的年金についてのイメージを一変させられることになるだろう。

 年金に関する実用的な知識を得たい方々だけではなく、純粋に知的な刺激を求める方々にも一読をお勧めしたい。私自身、知的な刺激が何よりも好物である。同好の士の期待を裏切らないことを約束する。

いま、知らないと絶対損する 年金50問50答
太田 啓之・著 , 三神 万里子・解説イラスト

定価:893円(税込) 発売日:2011年04月20日

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