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山崎豊子は最後まで壮大な作品を<br />発表し続けた

山崎豊子は最後まで壮大な作品を
発表し続けた

文・写真:「文藝春秋」写真資料部

 山崎豊子(やまさきとよこ)は、大正十三年(一九二四年)、大阪市生まれ。本名杉本豊子。実家は船場の老舗昆布舗「小倉屋山本」である。旧制京都女子専門学校を卒業後、毎日新聞入社。学芸部の上司に、井上靖がいた。昭和三十二年(一九五七年)、生家を題材にした「暖簾」を上梓する。昭和三十三年、吉本興業の創始者である吉本せいの生涯をモデルとした「花のれん」で第三十九回直木賞を受賞。小説執筆に専念するため、毎日新聞を退社した。

 昭和三十八年、大学医学部の生々しい実態を描いた「白い巨塔」は、新境地を開いた傑作で、広く社会的反響を呼んだ。「華麗なる一族」では、金融機関を舞台に、その暗部をえぐり出した。さらに、「不毛地帯」でソ連、「二つの祖国」でアメリカ、そして「大地の子」で中国と、日本とかかわりの深い大国との国際関係を、徹底した取材に基づき壮大なスケールで描いた。「大地の子」取材のおりには、胡耀邦総書記(当時)に会見した折、「中国のよい部分ばかりを書かない」とタンカを切った。

 その後も日本航空墜落事件を題材にした「沈まぬ太陽」、沖縄返還にかかわる密約の漏えい事件を描いた「運命の人」と、数年ごとに現代社会と深く関わりのある大作を発表し続け、そのほとんどが映画やテレビドラマとして映像化された。平成三年(一九九一年)、菊池寛賞受賞。晩年は原因不明の疼痛に悩まされ続けたが、最後まで執筆活動を続け、週刊新潮連載「約束の海」が絶筆となった。平成二十五年九月没。写真は昭和六十二年撮影。

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