2009.12.20 書評

<『日本の論点2010』に寄せて>
政権交代後の「論点」

文: 田原 総一朗 (ジャーナリスト)

『日本の論点2010』 (文藝春秋 編)

  八月三〇日投票の総選挙で、自民党は一九五五年に発足して以来、はじめて野党に敗れた。それも一一九議席という大敗であった。

 一方、民主党は三〇八議席を獲得して政権政党となった。もちろん、こちらも総選挙で勝ったのは、はじめてである。

 そして、『日本の論点2010』が刊行される時点では、自民党はまだ意識が野党に転換できていなくて、社会に何の発信もできていない。唯一ニュースになった出来事が、谷垣禎一総裁が自転車同士の接触事故で怪我をしたというのでは、同情にさえ値しない。

 

与党慣れしていない民主党

  だが、民主党もまた、はじめて権力を奪取はしたものの、まだ野党意識から抜けきれていず、それゆえの矛盾が少なからず露呈している。

 たとえば総選挙を戦うにあたって、民主党は、社民党、国民新党とともに、政権を奪取すれば、沖縄の米軍普天間基地を国外ないし県外に移設すると強調していた。

 日米同盟や在日米軍のもつ意味については、『論点2010』でも様々な論者がとり上げているが、現在、日本にある米軍基地の七五パーセントを沖縄が背負わされている。沖縄県民が限度を超えた負担を背負わされているわけで、沖縄県民が、そのことに強い不満を持ち、憤りを覚えているのは当然である。だから、民主・社民・国民新の三党が、普天間基地を国外ないし県外に移設すると力説したのは、沖縄県民にとっては当然願わしいことであり、心から賛成した。

 ところが、三党が政権を獲得すると俄然雲行きが怪しくなった。野党というのは権限もなく、その代わり責任もないので、国民に受けることを言いたい放題言っていればよい。そういう存在なのである。だが政権政党になると、権限とともに言ったことへの責任が生じる。

日本の論点2010
文藝春秋・編

定価:2900円(税込) 発売日:2009年12月07日

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