2014.11.02 インタビュー・対談

バンブーはぼくの心の友!

聞き手: 「オール讀物」編集部

『ほんとうの花を見せにきた』 (桜庭一樹 著)

バンブーはぼくの心の友!

 家族を組織に殺された少年・梗(きょう)。彼を死の淵から救ったのは人間そっくりの竹のおばけ・吸血鬼のバンブーだった。ムスタァ、洋治という2人のバンブーと奇妙な同居生活をおくることになった梗は、厳しい掟で自らを律し、人間社会の陰でひそかに棲息している吸血鬼一族の存在を知る――。

「『吸血鬼カーミラ』のようなヨーロッパのゴシックホラー、萩尾望都さんの『ポーの一族』といった吸血鬼ものが昔から大好きでした。東欧の山奥に棲む“不気味なもの”と人とが出逢う話って、私がずっと暮らしてきた山陰の風土、山の民が時折ふもとの村におりてくる日本古来の物語ともつながるところがある。『赤朽葉家の伝説』『伏』などでずっと書き続けているテーマを、今回は、大好きな吸血鬼を主人公にして書いてみようと思ったんです」

 人の血を吸う恐怖の吸血鬼も、桜庭さんの筆にかかれば、控えめな草食系キャラに生まれ変わる。若い姿のまま歳をとらず、寿命も120年と長いバンブー。そのせいか、梗を助けたムスタァと洋治は日々成長する人間の子を慈しみ、「生きていくこと」のかけがえのなさを説く。この疑似家族のありようは涙なしに読めないほどだが、皮肉なことにバンブーの掟では、人間との交流は何よりの大罪であった……。

桜庭一樹さくらばかずき/2007年『赤朽葉家の伝説』で第60回日本推理作家協会賞、08年『私の男』で第138回直木賞。近著に『無花果とムーン』『桜庭一樹短編集』等。

「子どものころ犬を飼っていて、『犬の3歳は人間だと○歳』という換算表を見たとき、『あ、追い越されてる! こいつ中年だったのか』と驚いたことがあります(笑)。でも、犬からしたらそれは当たり前で、むしろ犬の人生のスパンで見たら、人間の方があまりに変化せず、成長しないからびっくりだよな、と考えたことがありました。

 この小説を書き始めた頃、久しぶりにまた犬を飼い始めていて、そうか、人間の目から吸血鬼を見たら、ずいぶん寿命の長い、変化しない生き物に見えるだろうなと思いました。あと、よその子ってあっという間に大きくなるじゃないですか。友人の子をいつも『チビちゃん』と呼んでいたら、あるとき『もうチビじゃないよ』と冷静に返されて衝撃を受けて(笑)、子どもと大人とでは時間の流れ方が全然違う、ましてバンブーから見たら人間の子なんて日に日に変わっていく驚くべき存在なんだろうな、と想像したんです。

 そこで、吸血鬼と人間の子が一緒に暮らしたなら、変わっていく者と変わらない者との対比をうまく描くことができるかも、と発想しました。人生がわずかに交差する瞬間はあっても、両者はいつまでも一緒にはいられない。でも、それは悪いことではないんだよ、ということを書きたかったんです」

ほんとうの花を見せにきた
桜庭一樹・著

定価:本体1,400円+税 発売日:2014年09月26日

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オール讀物 2014年11月号

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