本の話

読者と作家を結ぶリボンのようなウェブメディア

キーワードで探す 閉じる
めっちゃおもろいやつがおる! 出口治明×仲野徹 歴史に残るリーダーたちの物語(後編)

めっちゃおもろいやつがおる! 出口治明×仲野徹 歴史に残るリーダーたちの物語(後編)

「本の話」編集部

『世界史の10人』 (出口治明 著)


ジャンル : #ノンフィクション

偶然の重要性を知る

出口 僕がライフネット生命をスタートさせたのは、60歳のときです。ベンチャーは新しい海へと船をこぎ出すようなものですから、何かと大変でした。でも、過去のリーダーに学んだヒントが、けっこう役に立っているのです。ひとつには、歴史を勉強していると、いかに偶然の要素が大きく働いているかというのが、よくわかるからです。それに気づけば、人間は自分の身の丈を知ることができると思うのです。

仲野 そうそう、僕が学生にいつも言って、周りからいやがられることのもう一つは、「努力が報われる世界ほど、つまらないものはない」(笑)。

出口 逆にいえば、努力が報われる社会ほど、しんどくなります。一切、言い訳ができないわけですから。身の丈を知っていれば、うまくいかなかったときにも、自分のせいにして辛くなるのではなく、風が吹いた時にもう一度、頑張ってみようと思える。

 だけど、偶然や運というのは、神さまがプレゼントしてくれるものじゃなくて、適当な場所に、適当なときにいるということだと思うのです。ダーウィンの進化論じゃありませんが、運と適応が根本。

仲野 運も結果論ですね。そのときはわからない。あとからみて、あれは運やったんかなぁと。

出口 だからたぶん、運に頼りすぎている人は、適応できない(笑)。

 僕は、「棚から牡丹餅説」と言っていますが、棚から牡丹餅が落ちてきたとき、その近くにいることが運。でも、それだけじゃ牡丹餅を食べることはできなくて、棚から牡丹餅が落ちるときに、走っていって下で大きな口をあけることが適応だと(笑)。

仲野 むちゃくちゃ、わかりやすいです(笑)。

出口 そうであれば、人間にできることは、毎日何が起きるかわからないから、朝起きたときから元気にして、ちゃんとご飯を食べて、勉強もして、準備を整えておくことです。二日酔いでヨレヨレになっていたら、きれいな女性に出会ったとき、声もかけられない(笑)。だから、適応するにも準備が必要だと。

仲野徹

仲野 それは、生存するうえでも、非常に大切です(笑)。

出口 古代シュメールがご専門で、上智大学特任教授の月本昭男先生から聞いた話によると、メソポタミアには、これまで発掘されたものの10倍以上の粘土板が、地中にまだ埋まっているそうです。

仲野 いま、ISが縄張りを広げていたり、シリア内戦が起きている地域ですね。

出口 平和になって、また発掘調査が行われれば、みんながびっくりするようなことがわかるかもしれません。科学と同じように、歴史も日々新しくなる。それでも、人間の脳みそは1万3000年前から進化していないそうですね。だとすれば、人間の悩みも、嫉妬や陰謀、権力欲、大きな集団をどう率いるかに至るまで、古今東西のリーダーが経験してきたことと、現在でもそう変わりはないでしょう。第一、教材は過去にしかありません。
たくさんケースを知っているほど、判断力が正確になる。いろいろなケースを知っているということは、結局、いろいろな目でものごとが見られるということですから。

仲野 ある種のシミュレーションを行うことになるということですね。

出口 アホな人間がいる限り、歴史はアホな人間によってつくられていく。だから、歴史は面白い。生きたケーススタディである歴史を勉強していると、そんなふうに楽観的になれるんじゃないでしょうか。

仲野 むかしむかし、ナポレオン3世というおもろい皇帝がいました、などなど、歴史エピソードをふんだんに学べる――そして、こんなおもろい出口さんの教養に触れることができる。絶対に、読んで損はない一冊です。教科書みたいに一生懸命読む必要はありません、念のため(笑)。

仲野徹(なかの・とおる)
大阪大学医学系研究科・生命機能研究科教授。1957年大阪市生まれ。1981年大阪大学医学部卒業、内科医としての勤務、大阪大学医学部助手、ヨーロッパ分子生物学研究所研究員、京都大学医学部講師、大阪大学微生物病研究所教授を経て現職。専攻は、エピジェネティクス、幹細胞学。
著書に『カラーイラストでよくわかる 幹細胞とクローン―全能性のしくみから再生医学まで』(羊土社、2002)、『なかのとおるの生命科学者の伝記を読む』(学研メディカル秀潤社、2011)、『エピジェネティクス』(岩波新書)などがある。

出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険株式会社代表取締役会長兼CEO。1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業後、72年、日本生命保険相互会社に入社。企画部、財務企画部、ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て退職。2006年、ネットライフ企画株式会社(2年後、現社名に変更)を設立、代表取締役社長に就任。13年より現職。
著書に『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『生命保険とのつき合い方』(岩波新書)、『仕事に効く教養としての
世界史』(祥伝社)、『「働き方」の教科書』(新潮社)、『人生を面白くする本物の教養』(幻冬舎新書)などがある。

世界史の10人
出口治明・著

定価:本体1,400円+税 発売日:2015年10月31日

詳しい内容はこちら

プレゼント
  • 『グローバルサウスの逆襲』池上彰・佐藤優 著

    ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。

    応募期間 2024/4/19~2024/4/26
    賞品 新書『グローバルサウスの逆襲』池上彰・佐藤優 著 5名様

    ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。

ページの先頭へ戻る