2011.05.20 インタビュー・対談

「また二人に会いたい」の声に励まされて──

聞き手: 「本の話」編集部

『耳袋秘帖 王子狐火殺人事件』 (風野真知雄 著)

「また二人に会いたい」の声に励まされて──

───江戸の名奉行根岸肥前守が、町で起きた不思議な事件を解き明かす書き下ろし時代小説文庫の人気シリーズ『耳袋秘帖』に、人気の脇役だった同心の栗田と家臣の坂巻が、いよいよ戻ってきました。

風野 『耳袋秘帖』は、椀田と宮尾が活躍する「妖談」シリーズ(文春文庫)を四巻、栗田と坂巻が出てくる「殺人事件」シリーズを十巻刊行しました。おかげさまで、読者の方に愛される作品になりましたが、「殺人事件」シリーズは、急ピッチで書き続けたこともあり、なかなか思うように書けなくなってしまい、二〇〇九年十一月刊の『神楽坂迷い道殺人事件』(だいわ文庫)を出してから、少しお休みをいただいていました。気分を変える意味でも、もっと、怪談テイストを前面に出した、おどろおどろしいものを書いてみたいと思って、今度は、当初から構想していた「妖談」シリーズを始めたのですが、その間も、読者の方から、「栗田と坂巻はどうなったのか?」「二人にまた会いたい」という、うれしいお声も多くいただいておりました。ここに来て、どうにか充電が終わりましたので「殺人事件」シリーズを、再スタートできる運びになりました。

───『耳袋秘帖』は、最初に町で起きた不思議な噂話が、同心たちを経由して根岸の耳に入り、彼が合理的に解決していくという形式を取っています。このミステリー仕立ての面白さが『耳袋秘帖』の特徴で、これまでも交換殺人や暗号、安楽椅子探偵に倒叙と、作品にふんだんにミステリー的要素を盛り込まれてきました。今回の『王子狐火』も、「狐」をキーワードにした殺害予告、そして殺人が起きるという謎に満ちた始まりですね。

風野 私の作品を、ミステリーと言ってしまうのは恥ずかしいのですが、不可解な話があって、そこに合理的な解決をつけるという物語の流れは、捕物帖の原型であり、大好きな『半七捕物帳』の影響が大きいと思います。実は、一つの謎を「ああでもない、こうでもない」とこねくり回すというのは、あまり好きではなく、むしろ、一つの謎が解決したら、次から次に、謎が現れてくる。そういう話を書きたいし、読みたいと思っているんです。瞬時に謎を解く根岸というキャラクターも、そういう物語の要請から生まれました。でも、大きな流れの話を書く一方で、一話一話、きっちり解決がつく話を作るのは、けっこう大変なんです。ですから、かき終えた後はいつももっとこうすればよかったという後悔の連続なのですが、今回の『王子狐火殺人事件』の中では、人が犬を噛んだ騒動を書いた「人が犬を」という作品は、会心の一作になりました。

王子狐火殺人事件
風野 真知雄・著

定価:600円(税込) 発売日:2011年05月10日

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