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『ロスジェネの逆襲』名言集 半沢直樹の流儀

『ロスジェネの逆襲』名言集 半沢直樹の流儀

文:大谷 道子 (ライター)

『ロスジェネの逆襲』 (池井戸潤 著)

出典 : #週刊文春
ジャンル : #エンタメ・ミステリ

仕事とは何か

illustration by 木内達朗

プレッシャーのない仕事なんかない。仕事に限らず、なんでもそうだ。嵐もあれば日照りもある。それを乗り越える力があってこそ、仕事は成立する

いろんな奴がいる。それが世の中です。そいつらから目を背けていては人生は切り拓けない。会社の将来もです

 世の流れは読めない。人は思い通りには動かない。周囲の人々に語る言葉からわかるように、半沢も自分の限界を知っている。そのうえで「今、ここで生きていく」と決める大人の強さが、求められているのだ。

仕事は客のためにするもんだ。ひいては世の中のためにする。その大原則を忘れたとき、人は自分のためだけに仕事をするようになる。自分のためにした仕事は内向きで、卑屈で、身勝手な都合で醜く歪んでいく。そういう連中が増えれば、当然組織も腐っていく。組織が腐れば、世の中も腐る

 収入を得るため。人に認められるため。若い頃、仕事の意味と価値は、とかく近視眼的に捉えられがちである。だから、半沢は部下に投げかける。自分のためだけでなく、誰かのためにする仕事こそが本物であり、本筋なのだと。

 実は、仕事に慣れたベテラン世代こそが、このことを忘れがちになっているのかもしれない。思わずハッとさせられるフレーズ。

簡単なことさ。正しいことを正しいといえること。世の中の常識と組織の常識を一致させること。ただ、それだけのことだ。ひたむきで誠実に働いた者がきちんと評価される。そんな当たり前のことさえ、いまの組織はできていない

全ての働く人は、自分を必要とされる場所にいて、そこで活躍するのが一番幸せなんだ。会社の大小なんて関係がない。知名度も。オレたちが追求すべきは看板じゃなく、中味だ

 あなたの信念とは? 作中、部下にたびたび問われ、半沢はその都度、丁寧に語り聞かせる。真面目に働いた者がフェアに認められること。そして、誰もが自分の天分と天命をわきまえ、一度きりの人生を充実させること。シンプルで力強い、仕事人・半沢直樹の幸福論、その真髄。

戦え、森山(部下の名前)。そしてオレも戦う。誰かが、そうやって戦っている以上、世の中は捨てたもんじゃない。そう信じることが大切なんじゃないだろうか

 半沢対銀行、個人対組織。終盤までギリギリの攻防が繰り広げられる『ロスジェネ~』。その中で繰り返し語られるのは、望みを自ら勝ち取ることの尊さである。

 実際、こうしてセリフを抜き出して胸で反芻するだけで、写経効果(?)なのか、何となく目の前が開けていくような気が……。半沢の物語は、すべての働く人の明日に繋がっている、と信じたい。

文春文庫
銀翼のイカロス
池井戸潤

定価:836円(税込)発売日:2017年09月05日

文春文庫
ロスジェネの逆襲
池井戸潤

定価:770円(税込)発売日:2015年09月02日

文春文庫
オレたち花のバブル組
池井戸潤

定価:770円(税込)発売日:2010年12月03日

文春文庫
オレたちバブル入行組
池井戸潤

定価:770円(税込)発売日:2007年12月06日

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