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『銀翼のイカロス』期間限定無料公開【第3弾】

半沢直樹が帰ってきた! 出向先から銀行に復帰した半沢直樹は、破綻寸前の巨大航空会社を担当することに。半沢の前に立ちふさがる大臣と銀行上層部。

 #2から続く

 内藤に迎え入れられて入室してきた曾根崎雄也は、背後にもうひとりの男を伴ってきた。巨体で強面の曾根崎とは対照的に、こちらの男は小太りでどこかユーモラスな雰囲気がある。

「久しぶりだな、田島」

 その背後の男のほうに、半沢は声をかけた。「君も担当チームだったのか」

「こちらこそ、ご無沙汰しております」

 丁寧にお辞儀をした男の名前は、田島春。何年か前、短い間だったが、半沢と同じ部署にいたことのある男だ。見かけ通りの気の良い男だが、仕事はできる。

「部長から、担当替えを申しつけられて参りました」

 不機嫌そのものといった表情で曾根崎は切り出すと、「おい」、とぶっきらぼうな口調で田島に顎をしゃくった。

「こちらが帝国航空のファイルになります」

 田島が分厚いクレジットファイルをテーブルに置く。「関連資料は膨大ですので、それは後で」

「君もご苦労だったな、曾根崎君」

 内藤が余裕の表情で話しかけたが、曾根崎はにこりともしない。「途中で離れるのはさぞかし無念だろうが、まあ後は我々に任せてくれ」

 難しい顔をしたまま、小さく頷いたのみだ。今回のことは、曾根崎にしてみれば事実上の、“クビ”を宣告されたのに等しい。にこやかに談笑する気分でもないだろう。

 同時に、内藤は口にしなかったものの、この話が単なる担当替えに止まらないことを、半沢は悟っていた。

 旧産業中央銀行と、旧東京第一銀行というふたつの銀行が合併して誕生した東京中央銀行では、特に上層部においていまだ出身行同士の派閥争いが内燃している。行内ではそれぞれの出身行員たちが相手のことを旧S――旧産業中央銀行、旧T――旧東京第一銀行と呼び合い、様々な場面で目に見えない鍔迫り合いを繰り広げていた。

銀翼のイカロス池井戸 潤

定価:本体760円+税発売日:2017年09月05日