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『銀翼のイカロス』期間限定無料公開【第3弾】

半沢直樹が帰ってきた! 出向先から銀行に復帰した半沢直樹は、破綻寸前の巨大航空会社を担当することに。半沢の前に立ちふさがる大臣と銀行上層部。

 田島がいい、抱えてきた資料からファイルに挟まった分厚い冊子を出した。

 表紙のタイトルは、「帝国航空グループ再生中期プラン」。要約には、今年度からの三年間で千二百億円の黒字に転換するというまさに壮大な再生シナリオが記されている。これこそ、いまや銀行も政府も、まったく信用に値しないとダメ出しした計画書であった。その概要を、田島は要領よく詳説していく。

「従業員の削減も計画通りには進んでいないし、さらに予想された収益も未達のまま低迷しています」

「そもそも計画自体にも問題はあったんだろうが、なんでこうなる?」

 計画と現実とのあまりの乖離ぶりに、半沢は改めて問うた。「ウチだってその後の進捗は見守っていたわけだろう?」

「もちろんです。定期的にモニタリングして、改善を申し入れてきたんですが」

「帝国航空のメーンバンクは、たしか開投銀だったよな」

 資料のページをめくりながら、半沢はきいた。開投銀――開発投資銀行は、この数年で帝国航空に対して層倍の支援を行い、いまや東京中央銀行の支援残高を抜いて押しも押されもしないメーンバンクになった政府系銀行だ。開投銀の帝国航空に対する融資は二千五百億円。政府系とはいえその額はダントツで、開投銀と東京中央銀行の融資残高を合計すると帝国航空がもつ有利子負債の七割以上のシェアになる。

「開投銀からも、同様の申し入れはしていたはずです」と田島。

「それでも動かなかったと?」

 田島は苦悩の表情を浮かべた。

「肝心なのは帝国航空にとって事業計画など単なるペーパー程度の重みしかないということなんです。あるいは、金融機関から支援を引き出すためのツールといっていいかも知れません。計画して約束したことをきちんと果たそうという意識も希薄で、要するに危機感がないんですよ」

銀翼のイカロス池井戸 潤

定価:本体760円+税発売日:2017年09月05日