レビュー

寄り添えるかもしれないという希望は、手におえる男ではないと打ち砕かれる、影山という男

『ブルース』(桜木紫乃 著)

文: 壇 蜜 (タレント)
『ブルース』(桜木紫乃 著)

『ブルース』が新刊として世に出された時、帯コメントを担当した。「話中の女として自分が存在したかのように読んで、主人公に抱かれたような気持ちで読み終えた」という趣旨の言葉を綴り、顔写真つきで採用された。帯コメントは売り上げを左右する要素のひとつ。果たして貢献できたのだろうかと気になっていた。『ブルース』が発売され少し経った際、雑誌で作品の解説のような、感想のような文章を依頼される。当時の私はまだ「話中の女のひとりの気分」であった。その結果、解説的なものを求められているにも関わらず、あたかも「実は私は作品の中にいたのです。あの話の中には登場していなかっただけで……」と言わんばかりの、架空の女(自分がモデル)が綴った手記のようなものを書いた。自分は主人公の影山と繋がりがあった……、という私のおかしな妄想を、依頼された仕事の応えにしたのだ。よく桜木先生はじめ関係者の方々は私を「こいつ大丈夫か」と思わず対応してくれたものだと思う。発行されてからの解説も売り上げに関わるだろうに。桜木先生はその後この妄想を受け入れ、「返事」として新作の短編も書き上げて下さった。影山と私が出会うパートを新たに創造されたのだ。今でもコトの流れを思い起こし記していると背中がぞくりとする。「当時の私、よくこんな恐れおおいことができたもんだな」と。作家をつかまえて自分の創作を押し付けるなど失礼千万、と叱り飛ばされてもおかしくない状況を優しく受け入れてくださった桜木先生にこの場をかりて感謝の意をお伝えする。

ブルース桜木紫乃

定価:本体620円+税発売日:2017年11月09日