『幻庵』百田尚樹
囲碁家元四家 相関図
囲碁家元四家

名人碁所とは

井上因碩(後の幻庵)と本因坊丈和をはじめ、日本囲碁界の始祖で、織田信長から呼ばれたのが、僧の本因坊算砂である。算砂は、江戸幕府から扶持を受け、本因坊家を興して「名人碁所」に就いた。名人碁所とは幕府の役職のひとつで、将軍の囲碁指南役であり、全棋士の段位認定(免状発行)権などを持ち、囲碁界を支配できる立場であった。だが、碁所になるには、他の棋士とは隔絶した名人の技量が必要とされ、それゆえ江戸時代の二百六十年間でわずかに八人しか生まれなかった。