インタビューほか

「FA」と「逆指名」でプロ野球は決定的に傷ついた

「本の話」編集部

『プロ野球が殺される』 (海老沢泰久 著)

──川上監督が勇退すると、長嶋さんがあとを継ぎますが、ここから日本のプロ野球の変質がはじまったということでしょうか。

海老沢  長嶋は非常に優れた野球選手だったけど、1975年からの6シーズンで監督の器ではないことがわかってしまった。それが日本のプロ野球にとって、躓(つまず)きの第一歩だったと思う。その後、藤田元司と王が監督になってもジャイアンツはかつての栄光を取り戻すことにはならず、1993年に“第二次長嶋政権”がスタートしたことが決定的だった。

  監督として一度目はダメだったけれど、二度目の失敗は許されないということで、ジャイアンツを中心とする球界はルールをいじりはじめたということだろう。それが1993年に導入したFA制度とドラフトの逆指名制度(2001年からは自由獲得枠、2005年からは希望入団枠へと移行するが、実質はあまり変わらない)だけど、いい選手を集めて長嶋ジャイアンツを勝たせるための仕組み以外の何ものでもなかった。これで日本のプロ野球は決定的に傷ついたと、ぼくは思う。

──戦力の均衡が、プロスポーツ隆盛の鍵ですよね?

海老沢  NBAでは完全ウェーバー制を採用しているから、5年も最下位を続けるとドラフトでいい選手を獲得できて、強いチームができあがる。そんなストーリーがあれば面白いのに、日本人はそうは考えないようだね。みんな強くて人気があるジャイアンツのおこぼれに与(あずか)ろうというのだから、夢も希望もあったものじゃない。

  ファンというものは、選手がチームの勝利のために頑張っていると思うものだ。全力でプレーする選手の姿に、それぞれがフィクションを重ね合わせて楽しんでいるはずだ。それなのに、前年まではスワローズのエースだったグライシンガーと四番のラミレスが、揃って翌年にはジャイアンツのユニフォームを着て古巣と戦っているというのでは、ファンが思い描いていたストーリーが完全に崩れ去ってしまう。選手のチーム愛なんてウソだということがすっかりばれてしまったわけだ。選手はみな「ジャイアンツでプレーすることが夢だった」なんていうけれど、タダでもジャイアンツに行ったのだろうか。ファイターズからジャイアンツに移籍した小笠原道大は中心選手として頑張っているけれど、「ジャイアンツに行ってよかったことは何か? 楽しいか?」と聞いてみたいね。

プロ野球が殺される
海老沢 泰久・著

定価:560円(税込) 発売日:2009年09月04日

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