インタビューほか

北村 薫×桜庭一樹×宮部みゆき ビブリオバトル「直木賞受賞作、私のこの“1冊”」

第150回記念芥川賞&直木賞FESTIVAL

ビブリオバトル3番手、宮部みゆきさん

――最後に、宮部みゆきさんです。ちなみに、第119回は『赤目四十八瀧心中未遂』、第120回の直木賞受賞作が宮部さんの『理由』でした。それでは――スタートです!

宮部 まず有権者の皆様に訴えたいのは(笑)、私がオススメします姫野カオルコさんの『昭和の犬』は、第150回、一番新しい直木賞を全員一致、満場一致で受賞した作品だということです。ご存じのとおり、今回の直木賞は、『昭和の犬』と、朝井まかてさんの『恋歌』の2作が同時受賞したのですが、『恋歌』のほうも全員一致。10人の選考委員が全員、この2作を今回の受賞作としたいというふうに熱意を持って送り出しまして、関わっている者としては本当に幸せな結果でした。

 それでは、2作あるうち、なぜ『昭和の犬』のほうを私が選んだかと申しますと、『恋歌』は幕末の回想シーンと、明治の時代を生きるヒロインの姿が章を立てて交互に書かれている時代小説でして、『恋』の話であり、『歌』、和歌の世界が大変興味深く描かれています。

 ですから、『恋歌』というタイトルを見ただけで、「あ、これはきっとこういう小説で、きっとこういう喜びを与えてくれるに違いない」ということが大変わかりやすい。ところが、『昭和の犬』はタイトルだけ聞いても、このかわいいワンちゃんの写真がついている本のカバーを見ても、どういう小説なのかがよくわからないのです。

 先日、帝国ホテルで行われました贈賞パーティでは、選考委員代表として東野圭吾さんがスピーチされたのですけれども、選考会では、『恋歌』に関しては、みんなが具体的に「どこどこがよかった、ここがよかった」と言うのだけれども、『昭和の犬』は、とても抽象的な誉め方をして、「でも、とにかくいいから読んでくれ、読んでくれ」ということしか言わなかった。これはそういうタイプの小説だし、頭で考えて書こうとして書ける小説ではない。ここにいる選考委員10人の誰にも書けない小説だということをおっしゃられたのですが、まさにそのとおりなんです。

 オビには、「犬から透けて見える飼い主の事情」と書いてあります。確かに、この小説は短篇連作で、たくさんのワンちゃんと、それぞれの飼い主が登場して、人間ドラマを織りなしていきます。しかし、それは、「氷は南極にあります。氷は冷蔵庫でできます」ということが氷というものを説明していないのと同じように、この小説のほんの一部しか説明していないんです。

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