インタビューほか

〈対談〉『ぐるすべ』も実はパラレルなんです

「本の話」編集部

『ぐるぐるまわるすべり台』 (中村航 著)
『パラレル』 (長嶋有 著)

照れとの戦い

長嶋 ここは、離婚に至る前のワーッと泣いていたり、罵っている場面はあえて省いて、それが過ぎ去ったあとの焼け跡の二人を書こうとしたんです。

中村 その焼け跡を完全に掃除した感がありますよね。

 あとは、最後に(元)妻を初めて名前で呼ぶシーンとか、「おまえの顔がみえないんだよ」というセリフ。長嶋さんの今までの作品では言わせなかったことを、言わせてますよね。

長嶋 僕は、作中の「僕」に奥さんの名前を「奈美」と呼ばせるのがもう恥ずかしくて。妻が傘を忘れて、追いかけないと間に合わないから、名前を呼ばなければならない状況にしないと、「奈美」と言わせられなかった。照れとの戦いだったりするんですよね。中村さんは、そういう照れみたいなものはないの?

中村 多分ないですね。むしろ、書けるところは書き漏らさずという感じです。ただ、もちろん読んでいる人が恥ずかしいと思わないようには気をつけている。

長嶋 だから「本気かー」感があるし、僕には書けないんだ。でも説得力はあるんですよね。中村さんには、これからもこの精神というか、根底にあるトーンを貫いていってほしいな。

中村 長嶋さんは、もう離婚をテーマにはしないの。

長嶋 もう書かないと思う。むさ苦しいむくつけき野郎の話を書きすぎたから、今度は女性を主人公にしたいですね。

中村 『パラレル』というタイトルも今までの長嶋作品とは一味違って、意外で新しい。象徴的なタイトルですね。

 僕の単行本の中に収録されている「ぐるすべ」と「月に吠える」もある意味パラレルだし、「ぐるすべ」の中でのバンドの出来上がり方もパラレルだった。何が言いたいかというと、拡がりのあるタイトルだってことです。

長嶋 タイトルは結構悩みました。でも、ぱっとこのタイトルが浮かんだ時は、僕も編集者の顔も天啓を授かったような感じでしたね。パラレルという言葉のなめらかさというか語感は、この作品にとってもいい意味で影響するのではないかと。

 そういえば「ぐるぐるまわるすべり台」というのも、ある一つの図形というか、ものの動きを示しているから、パラレルと遠くない言葉ですね。

 これはもう、二冊いっぺんに買うしかない!

中村 その通り。

長嶋 うまくまとまったね。

ぐるぐるまわるすべり台
中村航・著

定価:本体500円+税 発売日:2006年05月10日

詳しい内容はこちら

パラレル
長嶋有・著

定価:本体505円+税 発売日:2007年06月08日

詳しい内容はこちら



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