書評

生きるという路上において、たった一人でぽつんと立っている迷い子たちの記

文: 中島らも (作家)

『天人唐草 自選作品集』(山岸凉子 著)

『天人唐草 自選作品集』(山岸凉子 著)

 一月十八日付朝日新聞朝刊。

 福岡市近郊の十四歳の男の子が自宅マンションの八階から飛び降り自殺をした。即死だった。この子は「完全自殺マニュアル」(太田出版)なるノウハウ本を熟読していて、その教えに従って飛び降り自殺を選んだらしい。そのマニュアルには飛び降りについて、

「地上二十m、七、八階以上の高さから飛び降りること。落下地点に障害物がないこと」などをチェックポイントとしたうえで、この方法自体については、

「痛みも不安も恐怖もない。むしろ気持ちがいい」と説明している。

 むしろ気持ちがいい?いったいどこの誰がそうおっしゃったのであろう。死者の霊でも呼んで聞いたのだろうか。

 一月十九日付、同夕刊。

 フロリダ州ウェストパームビーチ。十三歳の女の子がタクシー運転手を射殺した。殺した理由は、“運賃を払いたくなかった”からである。タクシー代は六ドルだった。

 一月二十一日、同夕刊。

 米児童擁護基金の発表。一九七九年から九一年までに五万人の子どもが銃によって死亡した。内訳は、殺人事件――ニ万四五五二人。自殺――一万六六一四人。暴発などの事故――七二五七人。etc。

 ほら、迷い子の列だ。

天人唐草山岸凉子

定価:本体780円+税発売日:2018年09月04日


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