インタビューほか

山岸凉子特別インタビュー 怜悧なまなざしで作品世界に切り込む! 読むたびに、新しく、胸に突き刺さる傑作集

門田恭子 (ライター)

『天人唐草 自選作品集』(山岸凉子 著)

『天人唐草 自選作品集』(山岸凉子 著)

「ハーピー」は山岸さんに大きな影響を与えたギリシャ神話に登場する女面鳥獣の怪物と、心理学の本で知った幻臭という言葉を結びつけて生まれた作品である。

「小学一年生のとき学校の引率でディズニー映画の『ファンタジア』を見て以来、私はギリシャ神話に夢中になりました。ケンタウルスにアポロン、悪魔たちの饗宴と、私にとって大好きな世界が目の前にあったのです。もう少し大きくなってからは、北欧神話のワルキューレをモチーフにした水野英子先生の『星のたてごと』。このふたつの作品に出会ってなかったら漫画家になっていなかったかもしれません」

 幻覚も幻聴も怖いが、臭いにはまた違った怖さがある。まして、それが死臭であれば。すぐそばに異様なものがいるのに、誰も気づかないという焦り。主人公の春海の目線を通して、読者の目にも川堀苑子の背中に黒々と広がる蝙蝠の羽が見えたかもしれない。「確かめるんだ、ぼくしかいない」と忍び込んだ女子更衣室で、彼が見たものは? ここで場面は鮮やかに切り替わり、初めて物語の真実を知ることになる。

「起承転結でいえば転の部分です。読者の思惑や予想をうまく外してあげる。私の場合、起と結が定まればストーリーはできたも同然。ハーピーはほんとうにいたという結末にもっていくのも可能ですが、ここは地に足のついたリアルな話にしたくて」

 見てはいけない狂気の淵をのぞいたような怖さがジワジワとわいてくる作品だ。


 ある評論家に「山岸凉子の漫画は主人公がみんな死ぬか、気が狂う作品しかない」といわれたことがあったそうだ。いやいや、そんなはずはないでしょ、ハッピーエンドもあったはずと、過去の作品をひっくり返したら……?

天人唐草山岸凉子

定価:本体780円+税発売日:2018年09月04日


 こちらもおすすめ
書評生きるという路上において、たった一人でぽつんと立っている迷い子たちの記(2018.09.22)