インタビューほか

山岸凉子特別インタビュー 怜悧なまなざしで作品世界に切り込む! 読むたびに、新しく、胸に突き刺さる傑作集

門田恭子 (ライター)

『天人唐草 自選作品集』(山岸凉子 著)

『天人唐草 自選作品集』(山岸凉子 著)

「あらまぁ、ほんとうに不幸な結末ばかり。自分でも驚きました(笑)。百パーセント恵まれて幸せな人は私の作品では悪役か、よくても脇役止まり。なんとも情けないです」

 この自選集の中でも「狐女」はひときわ陰惨な色合いが濃い。主人公の理は頭は切れるが、冷酷でねじくれた性格の持ち主だ。九歳にしては早熟すぎるように思えるが、「注意深く見ると、あのくらいの年齢でも大人顔負けの知恵が働く子はけっこういるはず」と山岸さんはいう。悲劇の始まりは十代の実の娘に手をつけて、子供を産ませたケダモノのような父親である。胸が苦しくなる設定だが、理が周囲から疎まれる理由もすっと腑に落ちる。近親相姦というきわどいテーマを山岸さんは代表作の「日出処の天子」を含めて、多くの作品で取り上げてきた。

「タブーを畏れる気持ちねぇ……、私は全然ないの(笑)。変態みたいだけど、むしろそれをテーマにして読者を驚かせたいと思うくらい。ブレーキを踏んで表現したい衝動を抑えられるのはまともな人。でも、人の心をつかむ作家にはなれない。若い人にもよくいうの、自分の恥をさらけ出せる人だけが漫画家になれるのよって」

 東京にもどる列車の中で、理の胸にともった冷たく青い狐火は、彼が抱いた孤独そのものだ。九歳の子をここまで容赦なく、突き放して描ける山岸凉子という人があらためて恐ろしくなってくる。


「籠の中の鳥」に登場するトリの一族は“飛ぶ”能力を持っているかわりに、からだのどこかにハンデを背負って生まれてくる。主人公・融のお祖母さんは死者とコミュニケーションすることはできるが、目は見えない。

「というのも、ある突出した能力は何かと引き換えでしか得られないと私は考えているから。持っている能力の量はみんな同じ。きれいな丸い形をしている人もいれば、ある部分がへこんでいるかわりに、反対側が飛び出している人もいる。その突出した部分こそが才能であり、芸術や科学をさらなる高みへ引き上げてきたのだとも思う」



こちらもおすすめ
書評生きるという路上において、たった一人でぽつんと立っている迷い子たちの記(2018.09.22)
天人唐草山岸凉子

定価:本体780円+税発売日:2018年09月04日