書評

「社長の椅子」に執念を燃やす「三角形の経営者」たち。

文: 楠木 建 (一橋大学教授)

『緊急重役会』(城山三郎 著)

『緊急重役会』(城山三郎 著)

 経営者には大別して2つのタイプがある。「三角形の経営者」と「矢印の経営者」だ。

 企業でも役所でも、あらゆる組織には階層的な権限配置の構造がある。どんなにフラットで自由闊達な組織であっても、そこには依然としてヒエラルキーがある。権限の階層性はいつの時代も変わらない組織の本質のひとつである。

 まるで登山のようにヒエラルキーを上へ上へと昇っていく。山頂にある社長のポストへの到達を最終目標として、キャリアを重ねていく。ついに社長になり、一件落着――。これが三角形の経営者だ。

 三角形の経営者は本当のリーダーではない。商売の基を創り、戦略ストーリーを構想し、商売丸ごとを動かして成果を出す。商売が向かっていく先を切り拓き、外に向かって動きと流れを生み出す。矢印の経営者こそが本来のリーダーだ。

 学校の物理の時間に習った「エネルギー保存の法則」を覚えているだろう。ボールをある高さに持ち上げる。そのボールは位置エネルギーを得る。ボールが落下するにしたがって、位置エネルギーの量は減り、運動エネルギーが大きくなる。逆もまた真なり。



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