インタビューほか

<中山七里インタビュー> 暴走老人と元判事の迷コンビ誕生

「オール讀物」編集部

『静おばあちゃんと要介護探偵』

『静おばあちゃんと要介護探偵』(中山七里 著)

 医療、音楽、警察など様々な題材に挑み、数多くの人気シリーズを持つ中山さんの作品の中で、最高齢のコンビなのが『静おばあちゃんと要介護探偵』。名古屋を舞台にした現代ミステリである。戦後の焼け跡から、裸一貫で中部経済界の怪物となった香月玄太郎は、気に入らなければ、警察署長すら怒鳴りつける、暴走機関車のような老人。一方の高遠寺静は、自らの正義を貫くため、高裁判事を退職した、日本で二十番目の女性裁判官なのだ。

「“暴走老人”の玄太郎が主人公のミステリ『要介護探偵の事件簿』の続編として、『静おばあちゃんにおまかせ』で、安楽椅子探偵として登場させた静さんと組ませたら、さらに面白くできるのではと思ったのがきっかけでした。この世代を書きたいと思った根底には、戦後の日本を作った世代の方への、私自身の畏敬の念があります。そして、いまは読者も書き手も、高齢化しているので、高齢の主人公を登場させたかった。あと大きな声では言えませんが、怖いものなしの二人なので、他の小説より制約が少ないのも書いていて楽しかったですね(笑)」

 物語は、静が、記念講演に訪れた名古屋の大学で、爆破されたモニュメントから死体が発見されるところから始まる。被害者はモニュメントの設計者で、講演を聞きに来た玄太郎の知り合いだった。死体は、いつ閉じ込められたのか、その謎に二人は挑むことに。そして二人の“正義”は時に対立しながらも、事件を解決に導いていく。
「名古屋はよく“偉大なる田舎”と称されますが、保守的で、ある意味日本らしさが凝縮された街です。一方、東京はとにかく建前を優先する。だから正義を語るにしても“東京の正義”と“名古屋の正義”は違うはず。そして、大正生まれのリベラルな静さんと、昭和一桁生まれで、食糧難を生き抜いたしたたかな経営者の玄太郎、二人に、街の特徴を重ね合わせることで、物語が動き始めました。舞台は、リーマンショック前夜の二〇〇五年に設定しています。当時起きたことが、その後、大きな社会問題となったものが多い。たとえば、今回取り上げているものでは、老人虐待や、詐欺、孤独死、外国人就労者などがそうです」

 また、各話のタイトルは、すべてクリスティ作品にまつわるもの。そんなところにもミステリへの愛が窺える。

「二月号からは、二人が活躍する続編が『オール讀物』で始まります。今度の舞台は、東京。アウェイでも玄太郎は暴走するのか、そして静とのコンビは事件を解決できるか。こちらもぜひ楽しみにしてください」


なかやましちり 一九六一年、岐阜県生まれ。二〇〇九年『さよならドビュッシー』で『このミステリーがすごい!』大賞を受賞しデビュー。『ネメシスの使者』など著書多数。

こちらのインタビューが掲載されているオール讀物 1月号

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