本の話

読者と作家を結ぶリボンのようなウェブメディア

キーワードで探す 閉じる
作家・倉橋由美子が全力を尽くして翻訳した最後の作品

作家・倉橋由美子が全力を尽くして翻訳した最後の作品

文:古屋美登里 (翻訳家)

『星の王子さま』(サン=テグジュペリ 著 倉橋由美子 訳)

出典 : #文春文庫
ジャンル : #小説

『星の王子さま』(サン=テグジュペリ 著 倉橋由美子 訳)

 有名の上に超がつくこの作品については「あとがき」で明快かつ的確に論じられているので、「解説」などは蛇足以外のなにものでもありません。ただ、私は倉橋氏とのつきあいが長く、翻訳を仕事にしていることもあり、その視点から倉橋氏の翻訳に対する姿勢について少し書いておきたいと思います。

 倉橋氏はこれまでに十五冊以上の翻訳書を上梓しています。そのなかで代表的なものといえば、『ぼくを探しに』(講談社)から始まるシェル・シルヴァスタインの一連の絵本でしょう。シルヴァスタインの詩の言葉や文章はとても簡潔です。とはいっても『屋根裏の明かり』や『天に落ちる』などは、語呂合わせ、もじり、脚韻といった言葉遊びが多く、ぴたりと決まった日本語にするのに多少手こずるタイプのものです。それなのに倉橋氏の訳文からは、struggle した形跡も手を焼いた片鱗も窺えず、愉快で楽しい雰囲気だけが伝わってきます。

文春文庫
星の王子さま
サン=テグジュペリ 倉橋由美子

定価:517円(税込)発売日:2019年05月09日

プレゼント
  • 『もう明日が待っている』鈴木おさむ・著

    ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。

    応募期間 2024/3/29~2024/4/5
    賞品 『もう明日が待っている』鈴木おさむ・著 5名様

    ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。

ページの先頭へ戻る