書評

癒しながら癒される──ご病気で傷つかれ痛みを知る、新時代の皇后像

文: 友納尚子

『皇后雅子さま物語』(友納尚子 著)

『皇后雅子さま物語』(友納尚子 著)

 令和元年(二〇一九年)五月一日、皇太子殿下が一二六代天皇に即位され、雅子妃殿下は新皇后となられた。

 雨上がりの道を、赤坂御所から皇居・宮殿に向かう車の中で、皇后は満面の笑顔を浮かべられていた。

 雨上がりと笑顔。その光景は、一九九三年(平成五年)のご成婚パレードを彷彿とさせるものだった。

 あの日も朝から小雨が降っていたが、パレード直前に止み、曇り空の下、大勢の人たちが沿道に人垣を作って皇太子同妃両殿下(当時)を一目見ようと待機していた。そこへ輝くティアラと白い花の付いたドレスに身を包まれた雅子妃が、半蔵門からの道を通り、オープンカーの中から手を振られた。曇り空がいっそう白いドレスの雅子妃を浮き立たせているようで、沿道の人々から歓喜の声が上がった。興奮の余り泣き出す人もいた。まるで映画のワンシーンを観ているかのようだった。雅子妃の俯(うつむ)き加減ではにかんだ笑顔からは、昭和生まれの奥ゆかしさと親しみやすさが感じられた。

あの、ご成婚のパレードの笑顔はどこへ行ってしまったのか──。その答えを求めて取材を続けてきた私にとって、即位の日の皇后の笑顔は印象深いものだった。

皇后雅子さま物語友納尚子

定価:本体890円+税発売日:2019年07月10日


 こちらもおすすめ
ニュース皇后陛下もご愛蔵。英国王室にも愛される「ジーヴス」シリーズの人気の理由とは?(2018.10.26)
書評昭和天皇と今上天皇の「退位」(2016.11.30)
書評第一級の史料が示唆する「昭和天皇の肉声」(2015.03.23)
書評『明治宮殿のさんざめき』解説(2013.09.11)
書評古代天皇陵の9割は別人!?(2011.10.19)