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【試し読み】本屋大賞受賞! 瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』第2回

文: 瀬尾 まいこ

『そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ 著)

 森宮さんは食べる手を休めずに言った。

「そりゃ、あるっていえばあるんだろうけど」

 私には父親が三人、母親が二人いる。家族の形態は、十七年間で七回も変わった。これだけ状況が変化していれば、しんどい思いをしたこともある。新しい父親や母親に緊張したり、その家のルールに順応するのに混乱したり、せっかくなじんだ人と別れるのに切なくなったり。けれど、どれも耐えられる範囲のもので、周りが期待するような悲しみや苦しみとはどこか違う気がする。

「でも、私の苦労って地味でたかが知れてるんだよなあ。もう少しドラマチックな不幸が必要っていうか……」

「優子ちゃんは時々妙なこと言うよなあ。だけど、意地悪な人が新しく母親になったところで、そう簡単に不幸になんてなれないんじゃない? そんなことより、この長ねぎとろっとしてておいしいね」

「そりゃどうも」

 森宮さんは私が夕飯の支度をしたときには、必ずほめてくれる。

「優子ちゃん、発想は妙だけど、食材を組み合わせるのはうまいよな」

「適当にほうり込んでるだけだよ。一緒に調理するとなんでもおいしくなるから」

 魚か肉を焼いたり煮たりするときには、野菜や豆腐、なんでも一緒に入れておけば、一品作るだけでバランスのいい食事に見える。というのは、以前共に暮らしていた梨花さんに教わった。料理は好きだけど、学校から帰って作るのは面倒で、平日はなんでも突っ込んだ煮物や炒め物を作ることが多い。食材が何種類か入っているとはいえ、おかずが一品なのはどうかと思うけれど、森宮さんはいつも満足そうに食べてくれる。

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そして、バトンは渡された瀬尾まいこ

定価:本体1,600円+税発売日:2018年02月22日


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