2013.05.28 インタビュー・対談

傷心と喪失の"その後"を
生きるために

聞き手: 「本の話」編集部

『ときぐすり』 (畠中恵 著)

傷心と喪失の生きるために" />

お寿ずの死から1年たって

――本シリーズのひとつ前の作品『こいわすれ』では、麻之助の妻・お寿ずと、生まれたばかりの小さな娘・お咲が亡くなるという衝撃的な事件がありました。読者の方からはどのような反応がありましたか?

畠中 主人公にとても近い人間が亡くなってしまったので、とても驚かれましたね。「えーっ!」という感じで。でも実際に江戸時代は今と比べると死亡率がとても高くて、特に出産時は危険だったんです。それに「まんまこと」シリーズは時間を進めるということを最初に決めていたので、登場人物がずっと同じままでいるということはないようにしたい、と考えていましたから。

――今回の作品はお寿ずが亡くなって1年が過ぎたところから始まります。「朝を覚えず」では、まだ妻を亡くした痛みから充分に回復していない麻之助が時折お寿ずの名を呼ぶ場面があり、それが夢の中のときもあれば、醒めてからのときもあって、とても切ないものがありました。そして麻之助は、ある眠り薬をめぐる騒動を調べるなか、最後に医者に捨て身の啖呵を切ります。麻之助には珍しい、伝法な口調で切られた啖呵が、素晴らしく感動的でした。

畠中 麻之助はこれまでも今もずっとふらふらしていて、そのなかでお寿ずさんの死を引きずっています。そういうとき、町名主としてしなければならないことができたらどうするのか――。「朝を覚えず」はそんなことを考えながら書いた物語です。作中にあるように、お寿ずさんの命が危なくなったときに特効薬があったら、たとえ危ないといわれているものでも、麻之助はどうにかしてその薬を手に入れて、お寿ずさんに呑ませたはず。でも実際にそれはできず、お寿ずさんは死んでしまった。その悔しさと怒りからなのか、結局「危ない薬」を麻之助は自分で呑むことになるのですが……。

――下手をすると麻之助は死んでいたかもしれませんね。危ういところにあえて突っ込んでゆく麻之助の姿にはらはらさせられる、とても魅力的な始まりの物語だと思いました。

「たからづくし」は、本シリーズではとても珍しい、清十郎が意外な形で失恋する物語ですね。

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ときぐすり

畠中 恵・著

定価:1470円(税込) 発売日:2013年05月29日

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