日本の輝ける時代、戦後復興と高度成長下の精神的支柱であった「土光イズム」が三〇年の時を超えて今、甦る。
「勤勉と節約」という日本型ピューリタニズムともいえる精神の実践者、土光敏夫の名前を思いがけず聞いたのは、三・一一東日本大震災とその後の福島第一原発事故ですべてのイベントが中止になり、列島各地を無常観が覆い尽くしていたあの頃、二〇一一年の春だった。大学教員兼フリーの政治ジャーナリストとして各地を講演で回っていた私の仕事も全てストップし、テレビや新聞、インターネットのニュースをチェックしながらの重苦しい日々が続いていた。
携帯電話の向こう側から、土光敏夫の名前を繰り返し私に伝えてきたのは、この『清貧と復興』の著者で、かつての職場の後輩、出町譲だった。懐かしさを伴って、三〇年ぶりに聞く土光敏夫の名前だった。
その日以来、私たちは「ジャーナリズムとは何か」「いま、なすべきことは何か」「日本、日本人とは……」と繰り返し語り合うことになった。
「いまこそ、土光さんのようなリーダーが必要なんです」
「先輩、わかりますよね!」
出町は熱く、繰り返し語った。私より一〇歳年下で、生の土光敏夫を知らない出町がそれほどまでに土光の魅力に引き寄せられたのはなぜか、正直いって驚いた。同時に、三〇年前、在京の民放テレビ局政治部で駆け出しの二〇代記者として取材した、土光の姿を思い出していた。
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