2008.03.20 インタビュー・対談

スタート地点に立った一冊

聞き手: 「本の話」編集部

『生きるコント』 (大宮エリー 著)

――映画監督、脚本家など多彩な活動をされているエリーさんですが、書籍としては三月に刊行された『生きるコント』が第一作となるわけですね。

大宮 そうです。ついに来たか、という感じです。実は小さい頃から漠然とですけど、本を書きたいな、という夢があったんです。だけど、作家というのは天才しかなれないんだと思ってて、自分が本を出せるなんて考えていなかったんです。だから、他人には口に出して将来は作家になりたい、なんて一度も言ったことはなかった。

 これまでの仕事、例えばミュージック・クリップはミュージシャンとのコラボレーション、映画は俳優さんとのコラボレーション。作って行く段階では撮影部、照明部、録音部、スタッフのみんな、エディター、ミキサーなどなど、いろんな人の力があって初めてできる作品。どれも共同作業ですよね。けれど、本は自分ひとりでつくるもの。もちろん担当者との二人三脚ではあるけれど、スポーツに例えるならマラソン。ランナーは私。担当者はコーチですね。走るためのプランとか体調を見てくれてる。でも走るのはあくまで私自身なんです。そういう訳で、初めての本というだけでなく始めから最後まで自分でやったという達成感が、本を出すという出来事にはある。連載をまとめただけではなく、だんだん変化していった文体やトーンをきちんと基準を決めて全部書き直し読みやすくしました。私にとって、やっと初めて物作りのスタートラインに立てたというか、初めの一歩を踏み出せたという実感があります。

――この本は「週刊文春」に連載中のエッセイを、約一年半分まとめたものですね。

大宮 「今週読み逃しちゃった。早く本になんないの、まとめて読むからさ」とか言われていたので、今度本になるよって伝えたら、みんなすごく喜んでくれました。

 あと、この一年半、私の連載を読んで、おもしろがってくれてコンタクトを取ってくださった方が多かったんです。映画やドラマや執筆の依頼のお話など沢山いただきました。まさにこの「生きるコント」は私の名刺代わりになってくれています。初めて会う役者さんやミュージシャンの方が、「楽しみに読んでるんですよ」とかおっしゃってくれて。意外なところに隠れ読者がいて、すごく励みになりました。

 ご自身でも本を出されている芸人・俳優の板尾創路(いつじ)さんは仲良くさせていただいているのですが、私が本を出す事を心配してくださっていて。「内容はいい、読んだらおもろい。でも、お前は女優でもタレントでもないし、無名なんやから、問題は本を手に取ってもらえるかやねん。手に取ってもらえたら勝ちや」。そこまで気にかけてもらって、これは頑張って宣伝して売らないと、と。こんだけ多くの本があって、自分の本なんか読んでもらえっこないところをなんとかそういう奇跡が起きないか、起こしたいな、と祈るような気持ちです。

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生きるコント
大宮エリー・著

定価:本体470円+税 発売日:2010年04月09日

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