2008.07.20 書評

正真正銘、求道者の物語

文: 万城目 学 (作家)

『武士道セブンティーン』 (誉田哲也 著)

 同じ剣道を扱った小説を書いたこともあり、前作『武士道シックスティーン』を読んだところ、これがたいへんおもしろく、「おもしろかったッス、おもしろかったッス」とあちこちで言っていたら、続編『武士道セブンティーン』の書評を書くという大役を授かってしまった。どうしよう。書評なんてこれまで書いたことないのに。

 もう少し小声で、自分にだけ聞こえる音量でささやいておけばよかった、と今さら思ったところで、ときすでに遅し。いつの間にか、家にはできたてほやほやの『武士道セブンティーン』が届いていた。ああ、こいつは責任重大だ、とぎゅうと身が引き締まる思いなれど、一方であのすばらしい物語を紡いだ二人に会いたい、という欲求が抑えきれない。矢も盾もたまらず、ページをめくる私。すぐさま、あの懐かしく、心地よい空気が蘇ってきた。気づいたとき、前作からおよそ一年ぶりの再会にもかかわらず、磯山香織嬢と西荻早苗嬢(今作では甲本姓)が躍動する新たな物語の世界に、いとも容易(たやす)く吸いこまれていたのである。

 前作から一つ学年が上がり、高校二年生になった香織と早苗。前作同様、二人の視点でもって、物語は交互に進んでいく。これが実にテンポがよく、たのしい。このチャプターが終わったら少し休憩にしようかな、と思っていても、次のチャプターの冒頭、新たな語り手が登場すると、「もう一章読んでみようかな」とついついページをめくってしまう。

 ちなみに前作において、私はだんぜん早苗派だった。しかし、世間では香織ファンが多数派を占めていたのだという。前作をお読みになっていない方に軽く説明すると、ちょっとムッチリ、おとぼけ体質なのが早苗。一方、幼稚園の頃から剣道一直線、弾けるような俊敏さを持ち、心の師匠は宮本武蔵、昼休みは『五輪書』関連の文庫本を読み耽り、片手で鉄アレイというのが香織である。いやあ、香織はないだろ、キツいだろ、と私は思うのだが、世間様は違ったらしい。ううむ、わからない。

 前作『武士道シックスティーン』は、早苗が市民剣道大会で香織にうっかり勝ってしまう場面から始まる。そのとき、二人は中学三年生。その後、リベンジに燃える香織は、スポーツ推薦枠で声をかけてきた高校の中から、早苗の通う学校を選ぶ。かくして二人は、東松(とうしょう)学園高校女子部の剣道部員として再会することになるのだ。

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武士道セブンティーン
誉田哲也・著

定価:本体630円+税 発売日:2011年02月10日

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