昨年、小社刊『終点のあの子』でデビューし、一躍文壇の注目を集めた柚木麻子さん。 各社から仕事の依頼が相次ぎ、現在、月に200~300枚を執筆する 「来るべき人気作家」だ。 待望の新刊『あまからカルテット』を上梓したばかりの柚木さんに、新作についてまた読書歴や今後の展望に関してうかがった。
――昨年出した『終点のあの子』は書評誌のランキングでいきなり3位をとり、評論家や作家など、玄人の注目を集めましたね。
柚木 ありがとうございます。
――期待の第2作目が今秋刊行されたわけですが、女子校でのいじめの話からはじまって、少女たちの心の襞を純文学的に繊細に描き出した前作とはうって変わって、徹底したエンターテインメントになっています。
柚木 いや、実はテレビドラマ化されるのを狙っておりまして(笑)。私、大学時代にドラマのプロットを書いていたので、原作になりやすい小説、というものが分かっているんです。
――30歳を目前に控えた仲良しの女性4人が、お互い同士を助け合って恋や仕事の難局を乗り越えて行く連作集です。清楚な美人でピアノ講師の咲子、辣腕編集者の薫子、女王様体質で美容部員をしている満里子、性格がよく料理上手の由香子……。
柚木 『若草物語』がベースになっているんです。長女メグが咲子、物書きを目指す次女ジョーが薫子、内気で学校にも行かず、家でピアノを弾いたり家事にいそしむ三女べスが由香子、おしゃまな末っ子エイミーが満里子。
――なるほど!
柚木 『細雪』の四姉妹も意識しています。三女雪子がお見合いを繰り返しながらやっと結婚が決まるというだけの話なのですが、大好きな小説です。
――この連作集を構想されたきっかけについて教えてください。
柚木 散歩が好きなので「街歩き」の話を描きたい、ということが最初にありました。女の子たちの街歩き。それだけですと話が広がらないので、彼女たちが「人捜し」するという設定を作りました。必然的に「街歩き」せざるを得なくなるように。
――ミステリー仕立てにした訳ですね。
柚木 あとは美味しいもの。先輩作家から売れるコツは「食」と「ミステリー」よ、と言われまして(笑)。
――第1作「恋する稲荷寿司」はお花見のとき近くに座っていた女性から玉子焼きを分けてもらった時の体験が基になっていると雑誌のインタビューで話されていましたね。
柚木 ええ。レシピを教えてもらっておけばよかった、という後悔から着想を得ました。