2014.04.03 書評

食料自給率の低い日本の弱点

文: 高橋 五郎 (愛知大学教授)

『日中食品汚染』 (高橋五郎 著)

 中国産食品には危険性がつきまとうがそれはなぜか。果たして日本産食品の安全性は確かなのか。今後、安全性を高めるにはどんな対策がありうるのか。

 これらに取り組むため筆者は、改めて中国現地調査を3度、日本のスーパーマーケットの食品売り場調査、日本の食品メーカーの工場見学、段ボール箱約3個分の中国語と日本語の資料収集、食品汚染に関する中国語と日本語による著書・論文の精査、日本の食品行政を所管する官庁へ数度にわたる取材を行った。

 この過程で最も困ったのは中国の食品加工工場調査だった。中国産食品を研究する日本人に、工場内部をさらけ出してくれるところはほぼなかった。許される範囲で情報をかき集めた。中国の大中小、グレード別のスーパーマーケットの食品売り場の様子を眺め、加工食品の包装袋記載の成分、食品添加物、賞味期限などの表示を読み、家で試食することもあった。それで分かったことは、中国で販売されている加工食品の種類や品目数が日本に比べて数段に多いことだった。もともと筆者は中国の農村や食料調査が本業で、これまでに集めて来た資料や現地調査が今回ほど役立ったことはない。農村では農薬、水質、土壌、肥培管理、都市では食品販売、食品添加物、味付けなどに関心を寄せてきた。

 中国語表記の農薬、食品添加物を和訳するのに数日を費やしたことも。中国では日本にない農薬、食品添加物が沢山使われている。中には違法なもの、すでに製造が禁止されたのに流通している農薬や食品添加物があり、ほとんどの中日辞典は頼りにならなかった。

 本書は3つの骨格から成る。

 1つは中国産食品の危険性について。ただ、危険、汚ないと指摘するだけでなく、構造的な問題を正面から掘り起こした。根底には、中国に於ける農薬、食品添加物、遺伝子組換え、重金属、土壌や水質汚染、農業生産現場や流通、食品加工メーカー、食品行政、人々の食に対する意識などの問題がある。農薬や抗生物質の薬剤耐性や交叉耐性の懸念が高まるほど、逆にそれらが大量に使われ、より強い薬剤を求める悪循環が始まっているのだ。

 次に、一見しただけでは元の農畜林水産物が何であったのかわからない食品の品目数が増え続け、そのことが日本の食品輸入先の分散と増加を誘発した。たとえば中国が北朝鮮から輸入したハマグリを加工して製造したエキスを、日本が輸入するような場合である。エキスに味噌、香料、食品添加物が加えられると元の姿は一層見えなくなる。この仕組みを解明するため、筆者は「食品モジュール」「食品アンブレラ」などの表を独自に作成し、食品の原材料がたどる過程を目に見える形で示した。

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『日中食品汚染』
高橋五郎・著

定価:760円+税 発売日:2014年03月20日

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