2013.11.21 書評

奥山景布子は琵琶法師である

文: 大矢 博子 (書評家)

『源平六花撰』 (奥山景布子 著)

 歴史は、それ自体が既に物語だ。

 日本という国がひとつのシステムの下に統一された戦国時代は、時に権謀術数渦巻く戦記物となり、時にサラリーマンの人生訓となり、時には武将の妻たちのホームドラマとなる。近代日本への革命であった明治維新は、夢見る若者たちの青春群像として描かれることもあれば、忠義を尽くしたがゆえに敗れた者たちの無念をすくい上げることもある。

 その多面性は、視点によって決まる。同じ関ヶ原にあっても、徳川家康と石田三成の思いには天と地ほどの隔たりがあったろう。たとえ目的を同じにする同志でも、沖田総司と土方歳三では目に映る景色が違ったろう。吉良邸に討入った忠臣蔵四十七士には、四十七通りの背景と事情があったはずだ。その四十七人それぞれの家族や恋人の存在を思えば、ドラマの数は何十倍にも膨れ上がる。よく知っているはずの歴史事件が、まったく別の顔を見せる。それが歴史小説の面白さだ。

 どの事件を、誰の目によって描くか。それによって何を浮かび上がらせるのか。それが歴史の語り部の手腕と言っていい。

 そんな歴史物の中で、最も長い間語り継がれ、さまざまな解釈や脚色、潤色がされてきたのが平家物語である。

【次ページ】

源平六花撰
奥山景布子・著

定価:590円+税 発売日:2013年11月08日

詳しい内容はこちら