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不機嫌な果実
「女の欲望」を描き切り、
論争を巻き起こした問題作!当時渡辺淳一氏の「失楽園」が賛否囂々、話題の渦を巻き起こしていた。渡辺氏を敬愛する林真理子さんは〝ならば私は女の心の奥の奥を書いて、世間に衝撃を与えてみせる〟強い決意を僕に語った。さらなる「ときめき」を求め夫以外の男性を渡り歩く主人公麻也子は呟く。〝夫以外の男とのセックスは、どうしてこんなに楽しいのだろうか〟それは、女性の欲望の解放を謳う高らかな宣言であり、新しい時代の幕開けを告げる小説の誕生だった。
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花の鎖
「物語で数独パズルをつくりたい」
−『花の鎖』はここから始まった。3人の女性の物語を読み継ぐ先に突然現れる「思いがけない一枚の絵」。それは、湊さんが愛する山登りのように、山頂に達した者しか見ることのできない雄大で美しい景色。そして、「花」「登山」「きんつば」という著者の好きなアイテムが物語の鍵となっていきます。単行本刊行は東日本大震災直後でしたが、こういう時だからこそ読者と直接会いましょう」とサイン会をしてもらいました。当日は予想を超える盛況で、なんと本が足りなくなるほどでした。
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太陽の坐る場所
これを読まずにはいられない、
スクールカースト小説の金字塔!本作に登場する 〝 同級生たち 〟 の自意識と、自己評価と、クラス内での位置づけ。卒業から10年の間に変化した微妙な関係性。すべてが突き刺さるようにリアルで、私たちがなかなか言葉にできない苦しさや違和感をえぐるように的確に描写していく。辻村作品の力強さがよくわかる一冊です。
高校時代の輝きと、社会に出てからの葛藤、そして、あがきー。
胸に響かないわけがない、必読の書です! -
猫を抱いて象と泳ぐ
コロナ禍の春に社会人になった私は、この本にずっと支えられてきました。
編集者としてスポーツを追っていた日にも、営業部に異動して書店を巡っていた日にも、この本が手元にあることを何度心強く、あたたかく思ったかわかりません。こんなに強く美しく、哀しくも喜びに満ちた小説があるのだ。いつかこんな小説が生まれる場所で仕事をしたい。と強く感じた日の自分がそこにいるようです。この小説は私にとって人生を変えた一冊なのかもしれません。でもこれは、今の私を、そして未来の私を支え続けてくれる一冊でもあるのです。
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旅をする木
何度でも、どこにいても、
読みなおしたくなる。28年前に1度だけ星野さんに会って取材をしたことがある。「日本に来るのも楽しみだけれど、すぐアラスカに帰りたくなるんです」「最近は、アラスカの広さから深さに目が行くようになって」物静かに語る星野さんの目は澄んでいて、どこか遠くを見ていた。
『旅をする木』は、星野さんが魅了されたアラスカの風や匂い、人々や動植物の息遣いを、リアルに感じさせてくれる。我々を惹きつけてやまない何かが、この本にはある。 -
父の詫び状
中学生の時に邦子さんに聞いた
「このうちに生まれてどう思う?」私は四番目の末っ子で、父に怒られた回数は少なかったはず。それでも、不満には思っていました。中学生のとき、邦子さんに聞いたことがあるんです。「このうちに生まれてどう思う?」って。私以上に叱られていた姉なら、不満タラタラかなと思ったら、「私、このうちに生まれて幸せでした」って言ったの。「私たちが産まれてきたとき、お父さんからもお母さんからも、歓迎されたんだよ。こんな幸せなことないでしょ」と。私は目が覚めました。(向田和子)
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クライマーズ・ハイ
「これこそが私の読みたかったものだ!」と心を撃ち抜かれました。
編集も販売も広告も、対立する上層部の思惑も、家族に対してもあらゆる思いが渦巻き、熱量ハンパなく呑み込まれ、涙ぐんだり、思わず叫んだり。でもスッと心が澄みわたるシーンがある。仕事小説であり、家族小説であり、ミステリーでもあります。様々な局面で岐路に立たされる主人公・悠木から、自分もこんなふうに仕事に向き合いたい、人と向き合って繋がっていきたい、自分の信じる光を探り当てたいと、心を突き動かされました。
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後妻業
「まだ 世に出てないんやけど、
こんな話があるんや」新作の構想を聞いたときに覚えた戦慄はいまだ忘れられない。証拠を見つけることが困難な〝ほぼ完全犯罪〟が実際に起きており、それが報じられる前に小説化する。犯人以外は全容を知らない手口が、著者の想像力で埋められていく様は圧巻の一言。欲望渦巻く人間模様で物語がドライブしていくのも黒川ワールドの真骨頂。そして出版から数週間後に類似事件が報道された。事件の犯人は小説のタイトルから「後妻業」の女、と名付けられた。
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おひとりさまの老後
おひとりさまで老後を過ごすのは、
「かわいそう」でも「不幸」でもない。世の中には、老後の不安を煽るメッセージがあふれてます。けれども上野さんによると、不安の原因は、じつは解決できるとのこと。ノウハウと智恵があれば、友だちと交流したり、趣味や生きがいを楽しんだり、恋愛だってできるそう。体力の下り坂を受け入れながらも「人生の最後まで、自分らしく心地よく生きる」には。
誰もが老いるし、誰もがおひとりさまになる可能性のある超高齢化大国ニッポンを生きるための必読書です。 -
かわいそうだね?
登場人物の感情に身に覚えがありすぎて、心がギュッと締めつけられる。
「かわいそうだね?」の主人公は、彼氏の家に元カノが居候するという珍事に遭遇。庇護欲がかきたてられる元カノと、一人でも生きていける自分。悩んだ末にとった行動は……。「亜美ちゃんは美人」の主人公は、美人すぎる女友達との関係に煩悶。誰からも愛される友達と、おまけ扱いの自分の差。けれど、彼女の苦悩の「その先」までを描いているのが本作のすごいところ。読み終えた後は、救われた気持ちにきっとなります。
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テティスの逆鱗
美容整形に通いつめる四人。
終わりなき欲望が行きつく先は─。「レーシック、怖がってたけどもっと早くやればよかった!」新作の相談をしている時に、唯川さんとそんな会話をしたのを再読して思い出しました。身体にメスを入れることへのそこはかとない罪悪感が、快感へとぐるりと転換した瞬間。『テティスの逆鱗』はそのハードルを超えてしまった女たちが、どこまでも見えないゴールをめざし続ける物語。改造するのが顔や身体であっても、それは確実に心につながっていて、だからこそ恐ろしいけれど震えるほど悲しいのです。
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銀漢の賦
藤沢周平の正統な後継者。
これからも愛されて欲しい一冊。既に老いた男たちの憧憬の眼差しの清冽さにの涙がこぼれました。登場人物の剛直、清廉、内に秘めた少年のような純粋さは、まさに葉室さんご自身。よく仰っていた言葉は「負けたところからが人生」「人生も後半に差し掛かったとき、その悲哀を越えてゆく生き方があってほしい」。同年配の方には心強い友人のように、若い人には勝敗が長い時間には無効なのだと背中で教える先達の物語として、これからも愛されて欲しい一冊です。
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蒲生邸事件 上・下
宮部ワールドの魅力満載。
歴史探偵・半藤一利さんも感嘆!宮部みゆきさんの作品の中でも、最もチャレンジングな作品を文庫化できるんだ、と20年以上前に興奮したことを思い出す。この作品をどう表したらいいのだろう。
SF? ファンタジー? 歴史ミステリー?
はたまた宮部版“昭和史発掘”? 再読三読、そのたびに違う貌がみえてくる。二・二六事件。自分がそこにいたら、どうなるのか ─。現代を生きる主人公が、昭和11年のあの日に舞い降りる。徒手空拳の彼を動かすのは、作家の想像力だ。その凄みは、いまも変わらない。 -
その女アレックス
これがミステリーの力だと、教えてくれた傑作。
原稿を読みながら「えええええ」という驚愕の声を何度も上げた本なんて、他にあったかどうか。本書には10か所ほどの〝驚愕ポイント〟があって、そのたびに「アレックス」という女性の印象が激変する。そして素晴らしいのは、劇的なドンデン返しの連続からアレックスの傷だらけの肖像が浮かび上がること。最後の最後の謎解きで、彼女の壮絶な物語は完成するのです。これはミステリーだからこそできる感動だ、と思いました。ミステリーという小説の可能性をあらためて教えてくれた、私の自慢の一冊です。
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クリスマス・プレゼント
翻訳ミステリーひと筋の編集者が断言する
傑作短編集収録作品16編、すべてドンデン返し入り。嘘じゃないです。ミステリ短編集にもいろいろありますが、ここまで潔くサプライズに振り切ったものなど本格推理の黄金時代を含めても前例なし。全リソースをドンデン返しのために割き、あらゆる技巧を凝らす。名作長編『ボーン・コレクター』『ウォッチメイカー』で発揮された騙しの才能は、短編に注入されることで瞬発力UP、体感驚愕度も大幅UP。私の中ではクリスチアナ・ブランド『招かれざる客たちのビュッフェ』と並ぶ史上最強のミステリ短編集、つまりは21世紀最強のミステリ短編集。異論は認めません。
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神さまを待っている
「助けて」って、
誰に言ったらいいですか?自分は就職して、何も考えずに毎日働いていたけれど、愛のような生活になることを想像してふるえた。同じ時代を生きてきた私の友達にも、愛のことを知ってほしい。
節約しながらも楽しく遊んだ大学時代や、何十社も受けては面接でセクハラを受けた就職活動の話は自分のことのようだと思えたのに、読み進んで衝撃を受けた。
リアルで、文体が読みやすくて、一気にラストまでいってしまった。 -
武士道シックスティーン
カッコよくて愛おしい
著者初の青春エンターテイメント『ストロベリーナイト』や『ジウ』で警察小説の新たな書き手として注目を浴びていた誉田哲也さんに、最初にご提案いただいたのが剣道をする女の子の話でした。
剣道の大会の休憩時間に、中学生の女の子が胴と垂れをつけたままアイスを買いに行く姿に凛々しさと可愛らしさを覚えた誉田さん。また当時見ていた「仮面ライダー」では敵の怪人にも人間の姿があり、当然ライダーと怪人は戦うけれど、人間の時は互いの正体を知らずに二人の間に友情が芽生えていくという内容で、それを小説に生かせないかと考えられたそう。そこから、剣道の面をつけた女の子たち、「剛」の香織 と 「柔」の早苗 が生まれました。
お原稿をいただいた時は 本当に面白くて時間を忘れて一気読み!竹刀を交える女子のカッコよさと美しさ。挫折や苦悩を知って成長する姿の愛おしさ。こんなに最高の青春があるなんて! 彼女たちは必ずみんなに愛される。多くの人に知ってほしい!届けたい!と強く思いました。 -
ナイルパーチの女子会
読者の心に食らいつく、
獰猛すぎる「女友達」小説「柚木さんはこの魚についてとても詳細に取材をしていました。食性や来歴、日本で食用として売られるまでの流通に関しても…」
担当編集者のSさんはそう語った。取材をしていく中で分かってきたのは、ナイルパーチの恐ろしくも哀しい生態。「実際に金魚を捕食するところを見たんですけど、すごい迫力でした。この魚は一度棲みつくと、他の魚を食べて生態系までも壊して、自分の環境も悪化させてしまうことがある……ただ、それは人間が環境を変えたせいで、魚自体には何の罪もないのです」
大手商社の第一線で活躍する栄利子と、独自の文才で人気を博す主婦ブロガーの翔子。一度は意気投合するものの、些細な価値観の違いをきっかけに二人は決裂する。生きてきた環境が苛烈な分、両者の無自覚な攻撃性に容赦がなく、それが怖くもあり切ない。
一度ヒビが入ったら修復が難しいーー大人になってからの「女友達」の意外な脆さを味わえる、ダークで唯一無二な小説だ。 -
時をかけるゆとり
ゆとりでもゆとりじゃなくもて、
まじサイコー!!読み手の痛点を容赦なく突いてくる、怖いほどにえぐる小説を書く朝井リョウさん。
ところが、ところがですよ!
「10代で大きな文学賞を受賞した優等生作家のうまいことまとめたエッセイ」
なんて思ったらとんでもない大間違い。
だって、うそみたいに、うっかり、思わず、吹き出してしまう面白さ。
失敗談多すぎ!無謀すぎ!全体的におかしすぎ!
何も考えずに読んでほしい。
大学生を目指す人でも、青春時代まっさかりの人でも、学生時代から遠く離れた人でも、
最高に笑えて愛おしくて、何度でも読み返したい1冊なのです。 -
ハグとナガラ
二人一緒なら、
どんなことも乗り越えられる。ハグとナガラを見ていると、歳をとることが楽しみになってくるから不思議だ。
年齢を重ねると、しがらみも多くなるし、身体にもいっぱい不調が出てくる。
でも、この本を読むと、なんとかなる気がする。
とりあえず、何もかも放り出して、旅に出かけたい!という気持ちに駆られる。
それは何より、原田マハさんが大の旅好きで、プライベートの旅友と「旅」そのものに救われてきたからかもしれない。
日常からふっと解き放ってくれる力が、この本にはある。 -
秘密
ジャンル分け不可能な
不朽の名作!東野圭吾さんに最初に聞かされたアイディアが、「事故に遭った妻の心が娘の身体に宿ってしまった男の話」でした。「ぜひそれでいきましょう!」と即答したところ、「えっ、本当にいいんですか? このアイディアを話すとどの社も『そういうファンタジー系は東野さんじゃないでしょう』と言われるんですけどね」「いや、私はその話が読みたいです」数回に分けて原稿が送られてくるたびに、「いったいこの二人はどうなってしまうのか?」とハラハラしました。前半はコメディ要素が強かったのですが――終盤は切ない気持ちがどんどん膨らんでいき、号泣するしかないラストが待っていました。
何十回も読んでいるのに、今回も読み返していたらまんまと引き込まれて、会社のある駅を乗り過ごしてしまいました。ミステリー、ファンタジー、家族小説――ジャンル分けすることに意味がないほど、どの分野においてもマイルストーンであり、ベストセラー作家東野圭吾さんの大ブレイクのきっかけとなった、色褪せない傑作です。 -
テミスの剣
「ドンデン返しの帝王」が挑む
「冤罪と司法」「別冊文藝春秋」での『テミスの剣』連載時、印刷所の入稿リミットが刻一刻と迫り、不安になった私が進捗状況をうかがうと、「では、書きます!」。
影も形もなかった原稿が、数時間後には完成して送られてくるんですね。なぜこんなに早く? と驚く私に、七里さんはポツリと、「頭の中にある文章をキーボードで打っていくだけですから」。
連載をスタートする段階で、すでに「脳裏では最後の一行まで書き終えている」そうなんです。ということで「待つだけ」の担当者だったわけですが、たった一つ、連載中に七里さんから頼まれたことがあります。
「“血痕”〟について“あること”が可能かどうか調べてほしい」
ツテを辿り、某科捜研関係者に取材。「こうすればできます」と七里さんに報告した“あること”が何であったかは、実際に本書のページをめくって、大いにびっくりしていただけたらと思います! -
大本営参謀の情報戦記
太平洋戦争中に参謀をつとめた
「情報職人」による至言の数々玉砕に次ぐ玉砕、狂気じみた日本兵の戦いの裏にあった、軍部指導者たちによる圧倒的な情報の軽視、無視。情報が命を救い、命を奪う戦争での「職人芸」は、莫大な情報を安易に消費する現代の人たちにこそ必須ではないでしょうか。多くのビジネスパーソンから支持を受け続けてきたロングセラーですが、SNSやインターネットの情報に溺れかけている現役最前線の方に読んで欲しい一冊です。
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冬の光
人間の心の奥深さと圧倒的リアリティを
求める人にオススメします!ひとりの勝手な男が妻を裏切って不幸になる話? 高度成長期の夫婦の関係を描いている? 娘が父の真実を追うミステリー? 格差社会? 四国遍路?
担当編集としては『冬の光』の魅力をわかりやすく読者に伝えなくてはいけないのに、うまくパッと表現できない、豊かすぎて困った小説。でも、読みだしたら止まらない一級のエンタメ小説なんです。 -
田舎の紳士服店のモデルの妻
竜胆梨々子、30歳。
幸せな結婚と出産の「その後」を描いた物語容姿端麗な夫と、二人の子どもに囲まれて暮らす竜胆梨々子。そんな彼女が30歳にして直面した試練ーーそれは、夫のうつ病に伴う予期せぬ田舎暮らし。慣れない近所付き合いや、思い通りにならない家族との関係に、戸惑ったり、怒ったり、孤独を感じたり……。梨々子の感情の揺らぎと、彼女自身が少しずつ変化していく様子に引き込まれます。月日を経て「自分は何者でもない」ことに気づく梨々子の物語は、読んでいて切ないけれど、どこか包容力があって、温かい。読み終えた後は、自分や周囲の人を労りたくなるような、やさしい一作です。
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あかね空
家族の絆を問い直す
豆腐屋一家の物語家族の絆さえ揺るがなければ、必ずやり直せる!これは著者の信念だ。
長年営業マンとしてビジネスの最前線で活躍した経験と、大借金を抱えて一家で嵐の日々を過ごした年月が、この作品に身に迫るようなリアリティをもたらした。
今よりもはるかに厳しい暮らしの中に息づく人情の機微。
これぞ時代小説の醍醐味だ。
「作家になって借金を返す!」
そんな無謀な試みを成功させたのも、著者の経験に裏付けられた信念の賜物だ。
但し、みなさまくれぐれもマネはなさらないように。 -
風に舞いあがるビニールシート
大切な何かのために
懸命に生きる人たちの、6つの物語自らの信念や価値観を守って黙々と生きている人々を描く、そんなテーマのもとに描かれた小説です。資料をお渡しし、取材をご一緒していたので、何があがってくるかを知っているはずなのに、毎回本当に驚き、その面白さに衝撃を受けました。
登場人物が、いま、わたしの横に立っているかのように、その匂いも空気感も話している声も感じられるようにリアルなのです。普通に生きているわたしたちの日常の出来事が、こんなにドラマティックに鮮やかに描かれるなんて! どんなにわがままに振り回されても、痛い過去を突き付けられても、バカげたことだとわかっていても、くやしさもユーモアも悲しみもすべて、声高ではないのに揺るがない「負けない」という登場人物たちの強い想いとなって、自分の心に直接に伝わってくるのです。地道に生きるわたしたちを、温かく力強く支えてくれる、愛おしい一冊です。