10万部突破のベストセラー『夜の床屋』の著者、沢村浩輔さん。最新作『週末探偵』で初めて探偵が主人公の小説を書きました。週末だけ探偵事務所を開業した男2人が遭遇する、ほんのり不思議な6つの事件簿です。
――「週末限定の探偵」という、ありそうでなかった設定はどのように生まれたのでしょうか。
私が書いてきたミステリ小説には、一度もちゃんとした探偵が出てきません。舞台は日本や海外、現代や過去とさまざまだったにもかかわらず、我ながら不思議でした(笑)。いや、理由はわかっています。私の考えるストーリーは、たとえば大学生やニセモノの海賊など、登場人物の誰かがなりゆきで探偵役をつとめるというもので、探偵を出演させる必要がなかったんです。
そこで、今回は、探偵ありきで話を考えていきました。
――沢村さんはもともと名探偵がお好きだったんですよね。
はい、子供の頃から名探偵が好きでした。七〇年代、私が小学生から中学生にかけて、金田一耕助の大ブームがありました。古谷一行さんのドラマを見て面白そうだなと思って、中学生のときに横溝正史の『本陣殺人事件』を読み、推理小説の魅力に目覚めたんです。金田一シリーズは、どれを読んでも期待を裏切られなかったし、すべてがいいと思ったんです。実は、ペンネームの「浩輔」は金田一耕助から「こうすけ」の音を借りてつけました。今でも横溝正史は大好きですが、作風は全然似ていません。
海外ミステリは、登場人物一覧を見て探偵がいたら、優先して読みました。シャーロック・ホームズ、ポワロ、エラリー・クイーン、(ディクスン・カーの)フェル博士やヘンリ・メリヴェール卿の小説をずっと楽しく読んできました。
今回はじめて、探偵小説を書くにあたって、これまでにたくさん書かれてきたような王道ど真ん中のパターンをはずそうと思ったんです。そして、これから探偵になろうとしている若者たちを主人公にしようと決めました。
すると、読んでいるときには気にならなかったんですが、書いていると疑問がどんどん出てきたんです。