――『旅猫リポート』はもともと「週刊文春」の連載で、有川浩さんが紡ぐストーリーと村上勉さんの挿絵は、当初から大きな注目を集めていました。一昨年には単行本として上梓され、改めて全国の読者から熱い支持を得ています。今回、この作品が、装いも文章もまったく新しく「絵本」として誕生した背景を教えてください。
村上 2012年4月に「週刊文春」の連載25回が終了し、6月ごろに担当者の方から、私の描いた50枚の絵で本を作れないだろうかという打診がありました。でも、週刊誌のために描いたものだから大きさが正方形と縦長の決まった箱絵だし、週刊誌特有の強烈な誌面にインパクトを残すため、極端に墨ベタを使っているから、これをそのまま上製の本になんてとても出来ない。それに文章がなければ、本をめくる楽しみもありませんから、最初は逡巡したんです。
ところが、有川さんご自身も強い思い入れをお持ちの本だということもあり、夏になってもう1回、「何とかなりませんか」と電話をいただきました。それで試しに50枚の挿絵を全部コピーにとって、自分で本の形にしてみたんです。駄目もとで、どうにかならないか試行錯誤していくと、まず僕の挿絵の構図は使える部分は8割ほど使って、背景の縦や横を広げていく。そこに有川さんが見開きごとに2~3行の文章をつけてくれれば本が出来るんじゃないかという手ごたえをつかみました。でも、有川さんは大変にお忙しい作家だから、新しい文章を書いてもらうのは難しいかと……。
――その予想に反し、村上さんが描き直した50枚の場面に、早速、有川さんは応えてくれたそうですね。
村上 それはもう完璧なプロの仕事でした。実は、最初にお渡しした50枚だけでは、ストーリーがちぎれてしまうところがあって、僕自身、もう少し絵を描き足す必要があると思っていたんです。この物語は小学校時代の友人、中学時代の友人、高校時代の友人、そして叔母のもとを訪ねていく4つのお話から構成されていて、自分ではどうしてもこれがうまく繋げられなかった。もう、「これは有川さんにお任せしよう!」と投げたところ、見事に強力なボンドで繋いでくれました。また、有川さんは絵描きの絵をしっかり読んだ上で文章をつけてくれたのも、非常に嬉しかったですね。
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