定年後、アミューズメント施設に再就職した剣道の達人・清一(キヨ)、居酒屋の元主人で、腕っ節が自慢の重雄(シゲ)、頭脳派で町工場経営者の則夫(ノリ)。三人が結成した私設自警団が活躍する大人気連作の第二弾は、前作では少し困った人として描かれていたキヨの義理の娘・貴子の物語から始まる。
「続編を書かせていただけるなら、最初は貴子の話と決めていました。小説内のキャラクターはたとえ脇役であっても、記号ではなく一人の人間。以前から『カッコ悪いままはイヤだ』という貴子の声が聞こえていたので、なんとか負債が返せたという気持ちです」
じーばー世代から、貴子も含めたパパママ世代、そして貴子の息子の祐希やノリの娘・早苗(祐希と同学年)まで、世代や性別を超えた丁寧な人物描写は“なんでこんなに彼らの気持ちが分かるの!?”と読者を驚かせる。
「自分の中には中学二年の男子がいるんです(笑)。男性は皆、かつて中二でしたし、全ての中二男子は昔、子供だったわけで。そう考えると全世代の男性を描くことができます。女性に関しても、自分自身が昔は少女でしたし、生きていれば必ずおばあさんになるわけですから」
ちょっとしたお金の貸し借り、万引き、ゴミのポイ捨て被害など、身近な問題が中心になったのは、「派手な事件を出さなくても大丈夫」という自信がついたことも理由の一つだという。
「収録している六話を連載中、『ヒア・カムズ・ザ・サン』『旅猫リポート』という他の二作品も書いていたのですが、前者を書き上げて、“筆が変わった”と感じ、その進化を『旅猫』で活かしたうえで今作に戻って還元できた。例えるなら、今まで小さなバイクで気ままに走っていたのが、大型に変わり、絞ったアクセルワークで同じスピードが出せるようになった感覚です。排気量が増えた分、乗り方を選べるし、細かい押し引きで勝負できると思えるようになりました」
このシリーズには時代もののお約束がちりばめられているが、ラストではなんと“偽三匹”が登場する。
「“足るを知る、分をわきまえる”という価値観がもっと大事にされればさらに生きやすくなるんじゃないかと思うんです。偽三匹の登場は、活躍して少しいい気になっていたかもしれない本家三匹が自分達をふり返るきっかけにもなりました。同時に、作中の人物だけではなく、読者も含めてみんな“三匹”になれる可能性がある。見過ごせないことが起きたとき、自分だけで解決できなくても、助けを呼ぶだけでもいい。彼らはヒーローなんだけれど、あくまで等身大なんです」
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