- 2016.09.29
- 書評
予言村の転校生が怪事件の謎を追う「ほのこわ」青春ファンタジー、待望の続編!
文:東 えりか (書評家)
『三人の大叔母と幽霊屋敷』 (堀川アサコ 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
人は未来に対して希望や不安を持つ唯一の動物だ。他の生き物には今しかない。過去も将来も、今を生き延びるために必要なことではないからだ。明日を予想し、昨日を反省する。そうして人類は進歩してきた。
だからこそ「予言」が欲しくなる。太古から預言書はたくさん存在し、その本の解釈を巡って繰り返しブームがやってきた。
2015年9月3日に世界は滅亡するというマヤ文明の末裔であるホピ族の予言は記憶に新しい。オウム真理教の教祖、麻原彰晃が唱えた、近々ハルマゲドンが起きるという予言に、多くの信者が踊らされたことを思い出す人もいるだろう。
最大のブームは『ノストラダムスの大予言』だった。「1999年7の月に恐怖の大王が来るだろう」という予言は世紀末と相まって、大人も子供も大騒ぎをした記憶は鮮明だ。
「悪いことが起こる前に知りたい」という人の欲望は強い。初詣のおみくじや毎朝の星占いも、いいことは忘れても、悪いことをちょっと心に留めておくだけで意外な効果があるものなのだ。
堀川アサコの予言村シリーズも3巻目となった。こよみ村という小さな村には予言暦が存在している。前村長の湯木勘助の遺言によって、息子の育雄が村長選挙に立候補したのはこの年の4月。娘の奈央も妻の多喜子も大反対であったが、予言どおりに当選し育雄とともに奈央がこの村に住むことになった経緯は、1巻目の『予言村の転校生』に詳しい。
この村の中央にバイパスを通す計画があり、実現すると隣りの竜胆市と合併することになる。ご多分に漏れず、地域活性化のための開発推進派と自然保護派の対立は激しいが、実はその裏にはこの予言暦の存在が絡んでいる。村が無くなってしまったら、この予言暦はどうなるのか。村長をはじめとする自然保護派は「村の伝統」を守ろうとしているのだ。そしてその抗争の歴史にはさらに深い民俗学的な謎が隠されている。
連作短編集だから、どこからお読みいただいても十分面白いのだが、背景や登場人物を理解するためには出来れば最初から読んでほしい。物語の奥深さが更に楽しめるはずだ。
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